名古屋文理大学 情報メディア学部 iPad 授業レポート:生徒にとってあたりまえの道具化していた
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第3回スマートデバイスACADEMIAにおいて、iPadを学部全生徒(1,2年生)に配布している名古屋文理大学の情報メディア学部の事例紹介が行われましたが、今回、その実際の授業を取材してきました。
取材して分かったことは、現在の1年生にはiPad (3rd generation) with Wi-Fiが、2年生にはiPad 2 with Wi-Fiが配布されていて、3年4年生にはWindows PCノートが配布されていることで、3,4年生に配布されたノートPCは個人学習用途としての位置付けなのに対して、iPadは授業で積極的に活用されていました。
その違いは、端末の手軽さと、クライント側ソフトが豊富で、講義活用がしやすいという点が大きいのではないかと思いました。
今回、授業を見せてもらったのは、長谷川聡教授の講義で、ACADEMIAでも紹介があった、ソーシャルラーニングを活用した授業でした。
講義の節で、生徒の意見として収集する手段として利用されていたのですが、挙手して1人の意見を聞くのではなく、一斉に生徒の意見を集約し、それに対して先生が意見を述べるというのは、限られた授業時間を無駄にすることなく活用出来るのかもしれないと思いました。
また、生徒の意見としては、他の生徒の意見をリアルタイムに見られるのも良いと感じているようでした。
長谷川教授は、LMSとして、インフォテリアの「Handbook」を導入していて、生徒の机の上には紙の教科書はありませんでした。
このHandbookを使用する事で、生徒への紙の配布資料を用意する必要がなくなり、また生徒が欠席した授業の資料を入手することがもで「忘れ物」を防ぐことが出来るというのが特徴的だと思いました。
先生によって生徒への資料配布方法は様々ですが、どうせ配布する資料をパソコン上で作成し、印刷して配布するのであれば、そのままPDF書き出しするだけで済み、先生の作業負担も特に無いため、1日の授業の中でiPadを利用した講義が1回以上実施されているそうです。
本多一彦教授は、Handbookを利用した授業の優位性として「アンケート機能」を上げていました。
講義レポートをメールで送るというのは、生徒側にとっては負担は少ないのですが、受ける側の先生にとっては、1授業だけで何十通ものメールを受け取るため管理がとても大変になります。
Handbookの場合は、講義終了後5分程度の時間を用意すれば、生徒がアプリ内から講義に対してのレポート送信が行え回収率がとても向上するそうです。また、それらのレポートをCSV形式で一括ダウンロードし、Microsoft Excelで読み込んで管理出来るので、先生側の負担も低減されるのが良いと話してました。
「生徒の利便性と先生の利便性の両立」はとても大きな課題だと思いますが、そうした問題点が実践導入する経験によって蓄積されているなと感じました。
学部の1学年は100名で、今回の講義を受けていたのは約30名ほど、そのうちの3分の1の生徒が、iPadを使ってノートを取っていました。
残りの生徒は、紙のノートを使っていました。その様子をみていて気が付いたのですが、紙のノートを使用している生徒は、iPadを平置かキーボードスタンドモードで利用している事が多いのに対して、iPadでノートを取っている生徒は、FacTimeとビデオのスタンドモードで利用している事が多かったです。
ようは縦て利用しているわけですが、その状態でソフトキーボードを利用している生徒と、Bluetoothキーボードを利用している生徒が半々でした。
キーボードスタンドモードでノートを取っている生徒が見当たらなかったのは、おそらく天井の蛍光灯が画面に写り込んで見えず辛いからだと思うのですが、自然に自分の使いやすいスタイルを見つけて、あたりまえの道具として使用している様は、使用方法の選択肢が少ないノートPCと比べて自由度が高いなと感じました。
また、講義の中で気になった点を、その場で検索する生徒もいれば、関連するアプリを探す生徒もいて、興味を持った瞬間に行う知識欲求に対する行動が千差万別だったのも興味深く感じました。
興味を持った事に対して「今すぐ調べる」のと「後で調べる」とでは、その実行率に大きな差が生じることは明らかなので、手軽に幅広い対応が可能なiPadは、生徒にとってあたりまえの道具と化していたように思います。
それはノートPCでも出来るとは思いますが、1日の授業で活用しようと考えたとき「バッテリー」の問題から容易ではないと思えます。
長谷川聡教授の講義のあと、長谷川聡教授のゼミを続けて取材させてもらいました。
このゼミに参加している生徒は3,4年生が多く、iPadが支給されていないため、何名かはノートPCを持参していました。ところが、長谷川聡教授が管理するiPadが配られて、結局それを利用していました。
長谷川聡教授が取材した小学校のフューチャースクールレポート紹介や、卒業生が制作したiPadボードゲームなどの紹介が行われていました。
とりわけゲーム開発に関する紹介は、自由な感じで受講していた生徒が、急に集中して見入っていたのは印象的でした。
また、Apple TVを利用して、各生徒のiPadをAirPlayを使って画面表示し、色々な発表も行われていました。
もしノートPCであれば、いちいち出力アダプタを繋ぎ直してという手間がかかりますが、AirPlayであれば簡単に端末表示切り替えが可能で、手軽さが良いようです。
本多一彦教授が授業活用におけるおすすめアプリとして、Tabula RasaのiPadアプリ「Jot! Whiteboard」を紹介してくれました。
これは、手描きした内容をオブジェクト管理していて、書いた後、自由に配置可能で、その内容を他のユーザーのJot! Whiteboardアプリに一斉共有することが出来るそうです。
また、アプリの提案している利用方法の発想を変えた事例として、TinpayのiPhone/iPadアプリ「おえかキロク」を紹介してくれました。
これは、低学年向けのお絵かきソフトですが、お絵描きの軌跡を記録してくれるため、例えば漢字の書き順が正しく理解できているかどうか?または、数式を正しく理解出来ているかどうか?について過程をチェックすることが出来るそうです。
通常であれば、漢字が書かれた状態、あるいは答えか書かれた数式といった最終段階でしか判断出来ない回答結果が、生徒の思考過程もチェック出来るようになるので便利だそうです。
名古屋文理大学では、授業におけるiPad活用だけでなく、佐原 理助教が中心となってiPhoneアプリ開発を行っている「iPhone 道場」があり、多くのヒット作や、企業との共同アプリ開発も手掛けているそうです。
そこで生まれたアプリの1つとして「TALK」というアプリがあります。これは、他国籍生徒が増えている状況の中で、子供は日本語が理解出来ても、親が日本語があまり上手ではないことがあり、そうした親と先生がコミュニケーションを取るためのツールとして開発されたアプリです。
予め生徒の親の母国語を登録しておけば、あとは一斉送信するメールの本文が各母国語に翻訳されて送信されます。
学校現場での外国人児童・保護者へのスケージュールおよび緊急災害時の情報配信を目的としたアプリですが、現場の先生の大きな課題をテクノロジーが解決してくれる1つの良例ではないかと感じました。
最後に、図書情報センターの長谷川旭氏に、現在の2年生にiPad 2 with Wi-Fiを配布したあと、現在の1年生にiPad (3rd generation) with Wi-Fiを配布する上で、Androidなど他の端末も候補として上がらなかったのか?と質問してみました。
長谷川氏によれば、確かにAndroidタブレットやKindleなども候補して上がり議論が行われたそうです。しかし、一貫性が保たれる必要性があり、管理面でのノウハウがそのまま有効利用出来るという点から今回もiPadを選択したと説明されていました。
大学として「iPad」に固守しているわけではないが、ベストな物を選択しただけということことだそうです。