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Mac Treasure Tracing Club
JPC Conference 2002

November 2002 MACお宝鑑定団 
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2002年11月14日多摩美術大学上野毛キャンパスにおいて開催された「JPC Conference 2002」に関するレポートです。


大きく変貌する日本語文字セットの最新状況レポート

・JPC Conference 2002において、Adobe-Japan 1-5とMac OS Xにおける日本語DTPについての詳細を説明する「大きく変貌する日本語文字セットの最新状況」というセミナーが行われました。

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左よりアップル 柴谷勝之 OSエンジニアリング ソフトウエアエンジニア
アップル 櫻場浩プロダクトマーケティング Mac OS X担当 課長
アドビシステムズ山本太郎エンジニアリング日本語タイポグラフィマネージャ
モデレータの菊池美範(株)エイアールー 代表取締役



セミナーはアップルMac OS X担当の櫻場氏による、DTPという観点から見たMac OS Xの進化についての説明より開始されました。これまで何度も述べられて来たようにAppleがMac OS Xで目指したのは"字種の制限の撤廃"、"優れた日本語組版の実現"、"フォント環境による制限の撤廃"、"効率的ワークフローの実現"の4点をベースとした「日本語DTPの再構築」。それに向けて20,000字と言って話題を呼んだApple Publishing Glyph Set、改めAdobe-Japan 1-5が有り、またフォントのダイナミックダウンロードが可能なOpenType, そしてPDFなどの技術の搭載が進められてきました。

とは言うものの、Mac OS X v10.0 では UNIX, Unicode, OpenType, ダイナミックダウンロードなどを実現しつつも、ヒラギノフォントにおいても当時制定されていた Adobe-Japan 1-4 準拠のものに留まり、Mac OS X v10.1によっても漸く 20,000字のApple Publishing Gliph Set、ことえり3を搭載したに過ぎませんでした。Mac OS X v10.2によって "(Protected CID)フォント(のOSネイティブな)サポート"、"グリフアクセス"を実現した事で、これで漸くMac OS X開発当初よりAppleが目指していた次世代DTPの世界が完成した事となります。

 さて、それではMac OS X v10.2のフィーチャーで有る、グリフサポートとは何でしょうか?

まず Mac OS X 10.1の話から。10.1の時代には、ことえりでアクセス出来る字体は JIS X 0123:2000 (7ビット及び8ビットの2バイト情報交換用符号化拡張漢字集合)で指定されているもの、文字パレットにおいても Unicode にマップされているものに制限されていました。このような状況を一新するためにMac OS X v10.2によって導入されたのが "Gliph Input Protocol" というワークフレーム。このワークフレームによって、アプリケーションはInDesignのように独自エンジンを開発せずともOpenTypeのグリフ への フルアクセス が可能となります。ちなみに、Mac OS X v10.2においても ことえり でアクセス出来るのは JIS X 0123:2000 に制限されているものの、文字パレットでは全てのグリフへアクセス出来るようになったので、グリフを指定する場合には文字パレットを利用するのが一番手っ取り早い方法になります。

ただ、1つ残念な点も。EGwordにおいて渡辺の "" について数多くの候補が出て来るのも、このフレームワークをサポートという事から分かるようにデベロッパがアクセスする事は既に出来るようになっているもの、テクニカルノートは未完成で近日公開を目指して作業中との事でした。

さて、最後は次世代日本語DTPへの移行について。Mac OS 9時代にはレイアウトはQuark XPress、フォントはホスト・プリンタの両方にCIDという形だったが、これからはレイアウトはInDesign 2.0で、フォントはCIDに追加してホストベースでプリンタにダイナミックダウンロード可能なOpenTypeというのが最もエレガントで、トラブルが少ないと説明されました。

後ほど詳細に触れますが、ここでチラっと日経デザインのトライアルについても紹介されました。

"Mac OS X v10.2 is ready for Japanese DTP" であり、「Appleは日本語DTPにコミット出来る唯一のプラットホームベンダ」という言葉で櫻場氏のプレゼンテーションは終了しました、

 続けて、Adobeにて日本語タイプグラフィを担当されている山本マネージャより "Adobe-Japan 1-5" についての解説が。  まず誕生について。Adobe-Japan 1-5は1-4までの進化とは多少意味合いが異なり、出版・印刷に必要とされる文字・異字体を収録したAdobe-Japan 1-4 (15,444文字) をベースに JIS X 0123:2000 (4,344文字)・国語審議会答申で提唱された印刷標準字体(表外漢字字体表) (38文字)・Mac OS X v10.2に搭載された写植文字などの4,873文字を追加して 20,317文字を制定したものとなっています。ここでの1つのポイントになるのは、Adobe-Japan 1-5よりも先行して Mac OS X v10.2にて整備された Apple Publishing Glyph Set (neary = ヒラギノフォント)が有る点。これによって、Adobe-Japan 1-5の中には「ヒラギノのデザイン(ルールなり、ポリシー)だからこそ分ける必要の有ったグリフ」というのも多少含まれているという問題も有るとチラッと触れられていました。

 さて、ではAdobe-Japan 1-5の存在意義とは何かと問われればズバリ "JIS X0213対応のフォント開発が必要な場合に参照可能なグリフセット" という事になります。しかしながら、フォントに対する要求はユーザーによって異なり「Adobe Japan 1-4, 1-3でも充分。いや、これでも数が多過ぎる」と意見から、「Adobe-Japan 1-5でも少ない」というものまで様々であり、事実上これらに全て応えられるグリフセットの制定は不可能。そこで今後のフォントは JIS X 0208に対応する Adobe-Japan 1-3対応、1-3に印刷出版で必要とされるグリフを収録した Adobe-Japan 1-4対応、JIS X0213に対応する Adobe-Japan 1-5対応の3パターンのどれかになるだろうという事でした。「明朝系であれば (1-5に) 対応するものも多いかもしれないが、(ハネや横棒を繋げる事の有無など) フォントデザイン上の問題まで別フォントにしている場合も有るのでゴシック系やPop系、若しくはスクリーンフォントでは対応する意味が少ないだろう」という事から分かるように、Adobe-Japan 1-5に対応しなければ劣っているという事は決して無く、逆に「グリフが多ければ、それだけメンテナンスなどのコストと手間が嵩み、フォントの品質劣化に繋がる危険性すら有る」という事で、フォントの性質によって準拠規格の選択も重要との事でした。ちなみにAdobeとしては小塚シリーズも含めて Adobe-Japan 1-5に準拠したフォントをリリースする予定は無いとの事でした。

最後にAdobe-Japan 1-4の仕様書 (PDF) 及び、Adobe-Japan 1-5についての1-4との差分仕様書 (PDF)について紹介されましたが、現在Adobeが配付している資料では Adobe-Japan 1-5のサンプルとして現在はヒラギノを使っているものの、それでは「(仕様書をベースに開発されるAdobe-Japan 1-5対応)フォントが全てヒラギノ(の色、雰囲気)を含んでしまう危険が有る」ために国語審議会答申で審議・提唱された印刷標準字体(表外漢字字体表)については12月を目処にヒラギノから置き換える準備を行っているのでフォント開発時には注意して欲しいとコメントされました。また、Adobe-Japan 1-5制定に伴って多少字形が変更されたAdobe-Japan 1-4の字形についても同時期に修正されるとの事でした。

 さて、最後はアップル柴谷エンジニアによるMac OS X v10.2でアップデートされたフォント環境の解説へ。

まずアプリケーションについて、これまで述べて来たようなJIS X0213などのMac OS Xならではのアドバンテージを享受するには「Unicode対応」とする必要が有り、ユーザーが対応/非対応を見極めるにはUnicodeにおいて U+10000以上に割り当てられているグリフを入力してみて、入力可能であればOKという事でした。

 さて、Adobe-Japan 1-5についてですが、文字パレットなどでその中身を見てみると非常に良く似たグリフが多数収録されています。これらはJIS X0208においても ラテン文字の "A (U+0041)"とギリシャ文字の "A (U+0391)" がほとんど同一という事が有るように、Unicodeのみに限った話ではないものの、OpenTypeにおいては "Feature" というフォントに様々な情報を持たせたデータもグリフとして指定しているので特に非漢字においてダブっているものが多いように見えます。

Featureの例としては

縦組やルビ、上付きなどで利用する "文字置き換え系Feature (substitutions)"
Unicode合成文字や分数、単位合字などで利用する "合字系Feature (ligatures)"
ベアカーニングで利用する "文字位置調整系Feature"
関連文字テーブル(Zapf)の "グリフデータベース"

などが挙げられます。InDesignにて "ft"、 "fi"の合字が行われたり、"オングストローム"という単位記号が有るのは、これらのFeatureをInDesignが利用しているからという事になります。

 ここで要注意なのは、このようなOpenTypeのFeatureを利用する際には、OpenTypeのグリフをIDで直接指定するような事はしないこと。例えば独自の文字組エンジンを搭載している Adobe InDesign 2 では、OpenTypeのグリフを直接指定した場合にはコピー&ペーストや編集を繰り返すと拡張情報が失われたり、縦横組などを変えた際に 約物 が正しく配列されないなどの問題が発生するので、書式設定や字形パレットを活用して入力する事が必須となります。

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InDesign 2で約物をグリフ直接指定入力した例。
縦横組を変更しても約物は変化していないのが分かる。



 ちなみに、Mac OS XにおいてはOpenTypeのグリフをコピー&ペーストする際には [Unicodeのコード + スタイル情報] という形で送り出す事で情報互換性を確保しています。このシステムによって、データのペースト先がGlyph Input Protocol対応アプリであれば元通りの形で再現、非対応アプリでは拡張情報が破棄された上で Unicode の文字に包摂変換か分解されて表示、SJISのみに対応するアプリではX 0208の範囲であれば入力出来るものの、範囲外のグリフについては残念ながら文字化けするとの事でした。例前に挙げた"オングストローム"をGlyph Input Protocol対応アプリで入力し、その文字を非対応アプリにペーストすると8文字のカタカナに分解されます。この原則は現在のような移行期や、他プラットホームとの互換性確保には重要になるので、留意する必要があるでしょう。

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OpenType非対応アプリで Unicodeへ包摂された例 

分解された例。"テキストエディット"を利用して
[標準テキスト] と [リッチテキスト] を切り替えると簡単に確認出来る



 それでは、グリフにアクセスする手段を説明します。OSに標準で装備されているのは前にも述べた通り "文字パレット" という事になります。この文字パレットにおいて無印の文字は JIS X0208 (Shift JIS)にも存在する文字であり、どのプラットホームでも基本的に問題が発生しないと考えられます。右下にグリーンの三角マークが付くのはUnicode対応アプリであれば利用可能なJIS X0213にマップされているフォント、黄色の三角マークはJIS X0213外ということになります。ちなみに、"関連文字"のエリアにはUnicodeにコードポイントを持つグリフが表示され、、それ以上のグリフを叩く場合にはオプション表示させた場合にグレーのオプションとして表示されるものを手動で入力する必要が有ります。

access.jpg

関連文字をキーにしてグリフへのアクセスも可能



このようにUnicodeにマップされているか、否かで、アクセス方法と互換性が大きく異なりますので充分に留意する必要が有るでしょう。

最後は肝心のフォントのインストール方法についての注意が。Mac OS Xには"ユーザー用"、"ローカルマシン用"、"ネットワークユーザ用"、"システム用"、"Classic用"と5ヶ所のフォントディレクトリが存在し、それぞれについて意味と設定方法が異なります。またネットワーク用などについてはフォントライセンスについて充分に注意する必要が有ります。さらに詳しい事は TIL 106417:Mac OS X 10: フォントの保存場所とその目的を、TIL 25251:Mac OS X: フォントのファイルフォーマットTechnical Note TN2024:The Mac OS X Font Manager と併せて確認して欲しいとの事でした。

これにて柴谷エンジニアによるプレゼンテーションは終了。

セミナーの最後にMac OS X内蔵のヒラギノフォントだけでも充分な商業出版が出来る事の実例の一つとして Adobe InDesign 2 によってレイアウトされ、DNPで印刷された11月20日に発売される "日経デザイン12月号" のブック in ブックが配付されました。驚くべきは、これは今週月曜日の入校したデータを先行して1,000部出力したものだと言う点。たった1,000部先行とは言え、商業出版物を木曜日には配付出来るほど Mac OS X で構築されたワークフローはトラブルが発生しにくく、基礎部分は充分に完成したシステムともいう事が出来るでしょう。ちなみに、日経デザイン12月号自体もMac OS Xのみで製作するトライアルとなっており、その様子はブックinブックに詳細が書かれています。

参考:大日本スクリーン「 ヒラギノOpenTypeに関するよくあるご質問と回答集(FAQ)



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