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H氏からの手紙
July 1999 MACお宝鑑定団 
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iBook Architecture

●Mac Power誌に連載されている「改造道」の著者である今井氏が、iBookに関しての投稿を寄せてくれました。(内容に関しての御質問等は、直接御本人宛にメールをして下さるようお願いします。)


iBookのアーキティクチャーは、非常に独創的なものとなっている。中でも特徴的なのが、ホストブリッジ(North Bridge)およびI/Oコントローラー(South Bridge)の役割だ。 Macのホストブリッジは、PSX(P5400/6400)、PSX Plus(PM5500)、Grackle(PMG3,iMac,PBG3)、Grackle v4(NewPMG3)と進化を重ねたが、その基本的な役割に変更はなかった。PowerPCバス(システムバス)とPCIバスのブリッジ(橋渡し)と、メインメモリやROM、2次キャッシュメモリ(バックサイドキャッシュは除く)のコントロールがその役割である。ところが、iBookに採用されたホストブリッジ「UniNorth」は、PowerPCバスとPCIバス、メモリバスの他に、AGPポートを備える。(AGPについては後述)その一方でメモりバスでのROMのサポートをやめ、ROMはPCIバスに接続される形となっている。また、ホストブリッジとしては初めて、Ethernetの論理レイヤーコントローラを内蔵し、外部に物理レイヤーコントローラを付けるだけで100Mbpsネットワークを構成できるようになった。本来、この役割はI/Oコントローラが行っていた部分だが、ホストブリッジ側に搭載されたことで、メインメモリとのDMA転送をより効率的に行えるようになった。

 I/Oコントローラにもメスが入り、大幅な仕様変更を受けている。新コントローラ「KeyLargo」が従来のPaddingtonから受けた主な変更点は、ディスクインターフェース(ATA)の強化、モダンI/Oコントローラの取り込みとレガシーI/Oの廃止などである。ディスクインターフェースは、従来のATA-3互換(16.6MB/秒)インターフェースに加えて、ATA-4互換(33.3MB/秒)UltraATAインターフェースが内蔵された。iBookなどのノート型モデルに内蔵される2.5インチハードディスクでは、今のところUltraATAが必要になるほど高速なドライブはまだないが、最近大容量化の進むディスク内蔵キャッシュにヒットした場合はその威力を発揮するだろう。また、無線通信インターフェース「Airport」は、CD-ROMドライブと同じくATAバスに接続される。その他にUSBコントローラが新たに内蔵された。これによって、基本的なモダンI/Oは全てチップセット内部に取り込まれ、ほとんど外付けのコントローラを必要とせずに新世代のMacを設計できるようになっている。外部チップとして残されたのは、サウンド、パワーマネージメント、モデムなどの、機種依存のインターフェースになっていることがわかる。

iBookBlock.jpg



 このチップセットの関係は、Ethernetコントローラなどの一部の機能を除くと、米インテル社の440チップセット(LX、EX、BX、GXなど)シリーズやその互換チップセットに非常に近いものだ。それぞれのチップの役割も非常に似通っているのは、各チップに要求される機能を考慮した結果であり、必然の成せるわざとも言える。

 Power Macintosh G3 (beige)に始まり、Power Macintosh G3 (Blue and White)で複雑化したG3 Macのアーキティクチャーは、ここに来て全面的な見直しが行われた。iBookで採用されたチップセットがそのまま今後のラインナップに採用される(通用する)かどうかはわからないが、今後登場するモデルのアーキティクチャはiBookのものがベースとなることは間違いない。

■AGP採用の真意

 Power Macintosh G3 (Blue and White)の登場時、アップルはAGPの不採用に関して「同等の転送速度が得られるPCIバスにビデオカードを搭載した」としていた。事実、AGP x1モードは66MHz PCIバスをベースにした規格であり、バースト転送時のデータ転送レートは266MB/sと等しい。しかし、それはあくまでもバースト転送時のピーク性能であり、その条件が揃わない場合には事情が異なってくる。まず、AGPはメインメモリとグラフィックコントローラの1体1のインターフェースであるため、複数のデバイスが共存するPCIバスと異なりアービトレーション(調停)の必要がない。また、PCIバスはアドレスバスとデータバスが重畳されているため、非連続なアドレスのアクセスでは、その転送速度は半分に低下してしまう。これを避けるためにAGPでは、SBA(サイドバンドアドレス)バスという専用のアドレスバスを使って、PCIバスをできるだけデータ転送に使えるように工夫されている。他にもパイプライン処理の導入などによって、AGPではPCIバスの持つ固有の問題を克服しているため、決してAGPと66MHz PCIバスは同等ではない。そして、AGPにはDDR(Double Data Rated)技術を使ったx2モード(512MB/s)があり、クロックの両エッジに同期してデータを転送することで、2倍の転送レートを得ることができる。さらにAGP 2.0規格から採用されたx4モード(1GB/s)では、2つのストローブ信号を使って、4倍の転送レートを得ることができるようになった。RAGE128の最新モデルも、このx4モードに対応しているが、iBookが採用するAGPは、公表された資料によればx2モードまでしかサポートしない。

 そもそも、なぜ最初にiBookにAGPが採用されたのか。次期デスクトップモデルであるNew Power Macintosh G3?用チップセットの兼用化によるコストダウンという意見もあるが、それだけの理由ではないはずだ。考えられる大きな理由は2つある。1つは主だったWindows用のグラフィックアクセラレーターの大半がAGPに移行し、PCI対応チップの選択肢が少なくなりつつあるという点だ。特にWindowsマシンと性能面で戦うには最先端のデバイスを使いたいところだが、グラフィックチップベンダーの主力はAGP対応チップであり、PCIではない。もう1点は、現在のWindowsマシンにできてMacにできないこと、そう、DVDのソフトウェアデコードを実現するためだと考えられる。最近のATIのグラフィックアクセラレータはいずれもDVD再生のサポート機能を有し、ソフトウェアによるDVDビデオ再生を実現している。にも関わらず、Power Macintosh G3 (Blue and White)やPowerBook G3 seriesでは、ZIVA DVDデコーダーの助けを借りてDVDビデオを再生してきた。これは、DVDビデオ再生に充分なだけのデータ転送レートが得られていないためだ。iBookにはZIVAを搭載する仕掛けはないが、CD-ROMドライブをDVD-ROMドライブに換装することは極めて容易だ。ソフトウェアでDVDデコードが可能になれば、それほどコストアップにならずにDVDビデオ再生が可能になる。パーソナルユース用のマシンであるiBookでこそDVDビデオ再生は実現したい機能だが、AGP採用はこれを実現するための布石となるだろう。

参考資料
Apple iBook Hardware Developer Note
Intel Accelerated Graphics Port Technology


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