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Mac Treasure Tracing Club
December 2002 MACお宝鑑定団 
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名古屋商科大学で12月10日に行なわれた「Apple記念講演会」のレポートです。

レポート

・論理から企画された戦略ではなく、体感で企画された戦略が需要で、それと基本的なことを実行することが大変難しいという前提で話すと前置きし、話の結論は「ビジネスは創造」だと述べてはじまりました。

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存在しない市場を想像するのが重要で、市場に要求される製品を作ってゆくだけでは世界市場で戦っていけない。それは新しいライフスタイルを創造し、新しいビジネスを創造することだと説明していました。その例として24時間開いている無形のサービスで成功した「コンビニエンスストア」を例にあげていました。

顧客の価値認識の考え方は、顧客は認識した価値に対して対価を払うので、その価値認識をビジネスのゴールとして考えるとするならば、顧客の期待を超えることが出来たら完了と呼べると説明し、ビジネスの視点として重要であるとしていました。

分析して調査して戦略を立てる人が多くいるが、それでは良い戦略は生まれず、あくまで戦略は現場の体感を重要視すべきで「論理と体感と実行」が重要で、頭だけで考えるべきではないと説明していました。

Appleの実例としてまず市場ターゲットに対する考え方に関して、市場マーケットを定義しようとすると「ビジネス」「教育」「家庭」「個人」「官庁」というのが普通の統計データの取り方だが、Appleの場合はビデオ」「出版」「音楽」といったソリューションで定義し、ビデオ1つとっても、放送局、学校、会社など様々な市場があり、それらに対してソリューションとして売っていくというのがAppleの定義だと説明していました。

次に「ユーザービヘイビア」で、ユーザーのタイプに分けて物を売る戦略、次に投資の戦略を考える場合、成熟したマーケット、一番利益を生むキャッシュカウ・マーケット、利益に直接結びつくわけではないが、その可能性が高いマーケット、の3があるとして、経営というのはお客に商品を売って対価を得、それを分配するのが経営真理なわけで、この3つの中で、どこにどのように売ってゆくかを考えると、Appleの場合は最後の「エマージェントマーケット(新興のマーケット)」を戦略マーケットに定めている。従って同じビジネスモデルをやって、違う結果を期待する経営者はバブルで、それと同じようにMacでも同じようにやって結果が出ないのにそれを繰り返すのは間違いだとし、素晴らしい会社というのは、常に外から見ると変わっている会社で、経営者も変わってゆかなければならないと説明していました。

次に、新しいビジネスモデルを創り出すための投資と題し、既存のビジネスモデルでは、デジタル化の遅れにより生産性が上がらず、その例としてDTPにおけるデジタル・メディア・パブリッシングについて紹介していました。こんなソフトでこんな感じでやればDTPが出来ますよという提案だけでは新しい市場は生まれず、そこで新しいライフスタイルと新しいビジネスモデルを提案してゆくで市場を作ってゆくことになると説明し、その具体例として「オンデマンド出版により、返本を削減」「入校のリードタイム短縮によるビジネスチャンス」「クロスメディアパブリッシング」を紹介していました。Appleの例として、コンピュータメーカーが新商品を発表すると決めるのは数日前で、既存の広告出版ではリードタイムが長いため、そのスケジュールにAppleの広告戦略が合わず、それによって広告出版社がビジネスチャンスを逃すことになってしまうと説明していました。

次に利益モデルに関して説明し、利益率と利益額の2つを向上させるためにAppleが取り組んできたのは、在庫回転率の向上であると説明していました。例として1台のコンピューターを売って10%の利益があるとすると、20万円の商品では2万円の利益が得られ、年間に在庫回転率が5回転と10回転では利益額が大きく違ってくるとし、Appleの場合、従来年4回だったものを数十回転としたサプライスマネージメントを実行してると説明していました。それによるメリットは、他社のパソコンより絶対的に安いわけではないが、対価に含める在庫コストを大幅に削減できるため、顧客が対価を感じない部分の削減に関しては一番進んでいると思うと説明していました。

利益の向上には商品価値の創出が重要で、たくさんの対価を支払ってもらえるだけの商品を開発することが重要だとしていました。利益管理においての取り組みについては、無形コストをいかに考慮するか?が重要であり、顧客が対価を支払う価値が無いと判断する部分を削減してゆくことが重要だと説明していました。その例として、コールセンターの対応時間を短くすることでより多くの顧客サポートが行えるとし、それを実現するために、なぜ電話がかかってくるのか?を分析すると、非常にベイシックな質問が多いことがわかったので、それならば充実したマニュアルを充実すれば良いということになる。しかし、経営者が商品部材のコストだけとか、マニュアルコストだけとかを考えてしまうと、適正な経営思考を失ってしまうと説明していました。その他に修理や返品など様々な部分で考慮すべき所があり、その中で顧客満足度と利益モデルという非常に難しい矛盾を解決出来るよう努力してゆくことが大切で、その一番のキーワードは「真のコストを探してゆく」ことで、顧客から対価を頂けないような部分を探し出し、それを投資に使ってゆくことが重要だと述べていました。

以前のAppleはシンガポールにある工場からゆっくり船で輸送していたが、現在は飛行機で空輸し、直接販売店に配送するシステムに変更し、何がどれだけ売れたかを即時把握し、それを補充してゆくモデルに変え、在庫回転率や在庫負担率を改善した。それによって、例え利益率が下がっても、在庫回転率が数十倍となれば、販売店の利益額は向上するとと説明していました。

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そして次にAppleが考えているサプライチェーンマネージメントは、売れた結果で補充するモデルとは別に、再び輸送コストが安い船舶輸送を復活させれば、ローエンドモデルはさらに安くすることが可能で、それを実現出来るようにするためには、船舶輸送は2週間かかるので、2週間先の受注予測精度を向上出来れば可能になり、それが次の段階のチャレンジと位置づけていると述べていました。

次にAppleの人事・組織モデルに関して説明し、個人に対する責任が大きいのが特徴で「個人のempowerment」「個人のCommitmentの結集」「プロセスにより成果を評価する」「常に新しいものを創造するという情熱」「Have Fun!」それがApple流だとし、遅刻しないで、夜遅くまで仕事する人材が良い社員だとは思わず、またプロセスが良く、どんなにがんばっても結果が伴わなければダメで、逆にさぼっても結果が出せればそれで良し、それがビジネスだと説明していました。

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今は会社が個人を保証する時代ではなく、自分のキャリアは自分で作ってゆく時代。そうした自己責任を意識し、自分をデベロップメントしてゆかなければならないとし、Appleの今の社員の中には「聞いてません」とか「教えてもらっていません」とか言う、自己責任を感じない社員はいないと述べていました。またビジネスは「エンジョイビジネス」でなければダメで、会社に行くのが楽しくないといけないと説明していました。

マーネージャーは部下をコントロールするのではく、毎日部下から学ぶことがあったかどうかを検証するよう言っており、自分のスタッフから1週間何も学ぶことが無かったらそれは私からみるとおかしいと述べ、上司が部下に教えるのではく、部下から学ぶことで企業が成長しているかどうかがわかると説明していました。

組織に関して、社長というのは「職位」ではなく「職種」であり、ウェブの中に社長という職種があり、他に広告担当といった職種があり、全ての人が誰に情報をシェアし、誰をサポートし、誰をドライブし、誰とどうゆうタスクをこなし難しい仕事をこなしてゆくのが、素晴らしい会社組織のモデルであり、今の会社のグローバルなあり方だと説明していました。「Who is my boss?」誰の部下というわけではなく、外資系にはたくさんのボスが存在すると述べていました。

次にコンペティション(競争戦略)に関して語り、最初にテクノロジー戦争が起こり、1992年には価格戦争が起こった。その次にユーザー・マイグレーション(他のブランドから移行させる)が必ず起こると説明し、車の場合だと、最初はT型フォード、次に価格競争、そしてトヨタから日産へ移行させるといった事例を紹介し、Appleの場合だと、Windows PCユーザーにMacを使ってもらうことを行っており、その場合に重要なのはスイッチングコストがどれぐらいかかるのかを考え、その負担を削減することをしっかり考えることが需要だと述べていました。

ユーザー・バリューを考える場合、顧客が価値認識しないコストを徹底して省くことは、送り手の使命だと思うと語り、流通コスト、在庫コスト、宣伝費にお金を払いますという顧客はいないわけで、広告宣伝1つとっても、ユーザーが喜ぶ宣伝と、何の価値も見いだせない広告宣伝もあるわけで、そうしたユーザー負担コストを考えることも需要だと説明していました。

価格優位だけでは競争力は維持出来ず、その例として1万円を超すフリースが1,980円となって驚いたと思う。それが今では1,980円があたりまえの価格となったが、それを1,000円にしてくれというのが顧客のニーズかというとそうではなく、他にはないのか?とか、バリエーションを増やして欲しいといった要望がでてくるわけで、価格だけが全てではないことを念頭において欲しいと述べていました。

Macは有形の価値よりも無形の価値という点で勝った商品で、その中でAppleの独自性を説明すると、ハードもOSもアプリケーションも自社で開発して提供しており、従って全て自社の決定でコントロールすることが出来るため、そういった意味で無形の価値の損失が少なく出来ると説明していました。Windows PCの場合だと、Intelがあり、Microsoftがあり、数万社のソフトウェアベンダーがあり、自社コントロールは難しいと述べていました。

次にニッチかボリューム・マーケットかという戦略のフォーカスについて語り、特定地域だけでしか販売されていないパソコンを除き、グローバルプレイヤーのパソコンメーカーとして、この不況下、アップルとDELLなどが数少ない黒字コンピュータメーカーだが、そのビジネスモデルは極端に180度違っていて、DELLの場合はテクノロジーを全部集めて組み立てるだけ、徹底して低い流通コストで商品を売る戦略モデルを採用しており、AppleはハードもOSもアプリケーションも自社で開発して提供し、販売方法も販売店やオンラインなどセグメント分けをして展開しており、DELLとはまったく異なっているとし、DELLが99,800円で販売を初めたからといって、それをAppleが追うことは不可能な話だと述べ、じゃあどうやって戦ってゆくのかと言うと、Appleしか出来ないバリューを売ってゆくことだと説明していました。

Appleのブランド戦略に関しては、「MacOS」「ユーザー・ロイヤリティー」「ライフスタイルブランド」の3つで、ライフスタイル・ブランド資産の発展を促進し、デジタル・ライフスタイルといったソリューション・メッセージの展開、無形の価値の一つであるインダストリアル・デザインの向上などがブランドをアップさせると述べていました。また、Appleは「カリフォルニア生まれらしい文化を持ったベンチャー・カンパニー」という存在だと説明していました。

「リアル・ピープル」キャンペーンに関して、全国放送という考えの元、スカイパーフェクTVで流す方向で進めており、リアル・ピープルは実際にWindowsを触ったことがある人が、Macを触った時の喜びを伝えることを目的としていると説明していました。なぜ?Macを買わないかを聞いてみると、友達が使っているからとか、Macは特別な人の商品だからとか、MacはWindowsとの互換性が無いからといった誤解がたくさんあると述べ、Macユーザーのかなりの人はWindowsを経験したことがあるのに対し、Windowsユーザーのほとんどの人はMacを知らない人が多く、Windowsユーザーはパッシブユーザーが多いので、Macを買わない垣根をとる、つまりニュートラルな状態に持ってゆくというのがこのキャンペーンの目的であると説明していました。

差別化戦略として展開しているのが「デジタル・ハブ」で、ただMacに繋げて経由しデータが流れてゆくだけではなく、そこに新しいライフスタイルを提案が出来るアプリケーションなどを積極的に展開してゆくことが重要だと述べ、今後もこうしたソフトウェアの開発に投資を行ってゆくと述べていました。

オンライン・ショッピングに関して、カタログ通販をネット上に持っていっただけでは意味がない。その新しい価値創造として「CTO(コンフィグレーション・トゥ・オーダー)」「パーソナライゼーション(ユーザに合わせたサービス)」「提供情報の質的向上」「膨大な品揃え」「容易な検索、ナビーゲションサービス」「さらなるボーダレス化」などを上げ、その別の形として飲食店でのトッピングを例にした説明を行っていました。

次にグローバル戦略に関して語り、グローバル・スタンダードはアメリカン・スタンダードとイコールではなく、デファクト・スタンダードを作るリーダーシップがグローバル・スタンダードとなると考えることがビジネスを創始できると説明していました。

世界に通用するブランドについて語り、1984年にGUIを搭載した初めてのパーソナルコンピュータが登場し、今後のコンピュータの将来は用途別に多様化、生産性の向上に寄与することになると述べ、ライフスタイルをもっと豊かにすることになるだろうと述べていました。

また、完全なボーダレス化を積極的に展開しているとし、世界同時に製品発表と販売を行い、価格改定も同時や在庫をなくすのも世界同時に行っていると述べ、これをAppleでは「One world, One price」と呼んでいて、組織も「People global,Act global」というのがキャッチフレーズで、今でも記者の人から日本社員はどれぐらい権利移譲されてるのか?といった質問が今だにされるが、Appleにはそうした感覚は持っておらず、世界中の組織で1つとなって動いており、大きな外資系企業の多くがそうした動きをしていると説明していました。

コーポレート・ブランドよりも強烈な商品ブランドを創ってゆくことを考えた場合、「UNICLO」というのは企業名ではなくブランド名で、ほとんどの人はファーストリテイリングという会社組織名を知らない。缶コーヒーの「BOSS」も同様で、それを会社名で呼ぶ人はいない。これらは商品ブランドが全面に出た例だと紹介し、Appleは昔、会社名とリンゴのマークを前面に押し出した広告展開を行っていたが、今は「iMac」という商品ブランドを強く押し出し、企業名は非常に小さくしか掲載していないと説明していました。昔はNEC、富士通、IBMといった企業名で売れたのかもしれないが、今は強烈な商品ブランドを持たなければいけない時代だと説明していました。

Appleでは、Macと呼ばないで「iMac」「iBook」「eMac」「PowerBook」「Power Mac」といったように、1つ1つの強烈なブランドを作っていて、そうしたことが出来るのはターゲットのポジショニングを合わせいるからで、誰に対して何を伝えるか?誰に売りたいか?そういったことを考えるのも、ブランドとして大事なことだと説明していました。

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ブランドの差別化戦略に関してコンピュータ業界マップを例にとって紹介していました。DELL、SONYなど指名買いブランドの他に、膨大な数のWintel陣営製品があるが、あんまり製品名にこだわっていないため、名前を消してこれはどこのどういった製品であるかをパっと言える人は少ないと述べ、その次に「iMac」というブランド製品名を説明していました。Appleも知らなければパソコンも知らない、それなのに「iMac」を指名買いする人がいると説明していました。そして大事なことは、iMacというブランドを指名したユーザーを「Apple」というブランドに持ってくることが重要だと説明していました。その理由は、後からメモリー増設もしなければ、OSのバージョンアップもしない、アプリケーションも買いにこないといったユーザーが結構いるので、それを「Apple」というブランドに持ってこないとビジネスチャンスを逃すことになると説明していました。

次にビジネスの将来について説明し、各時代ごとの主役産業は絶えず移り変わっており、ビジネスプレイヤーのダイナミックスが重要だと述べ、メディアの変遷に関しては、Appleが1992年に提唱していた図を元に説明していました。

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ユーザーとのコミュニケーション方法論の変化に関して語り、ユーザーのクレームを待っていてはだめで、それを探しにゆくぐらいの気持ちを持ち、問題イコール、ビジネスチャンスだと考えるべきだと説明していました。また、買ってくれる顧客より、買ってくれないお客の所に、もっと売ってゆくためのビジネスチャンスがあると考えるべきで、なぜ買ってくれないのか?そこに学ぶものがあると説明していました。競争して買った理由を具体的に考えることが重要で、競争に負けた理由としてプアな営業マンが口にするのは「価格が悪い」「商品力が悪い」「お客が悪い」それは言い訳でしかないと述べていました。

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今後の経営者のあり方として、Global Playerの育成に関して語り、日本のベンチャー企業の多くは、日本だけでビジネス展開することを考えている場合が多く、今後はグローバル化を意識し、グローバルプレイヤーとならないと、どんどん海外から入ってきてしまうと述べ、そのためには「異文化を知る」「言語の壁」「ベンチャースピリット(経営者責任意識)」「潜在能力の早期育成」が重要だと説明していました。

他言語を習得するのは会話をすることが重要ではなく、自分の持っているものを直接言って提案するための道具として重要であり、そのためには異文化を知らなければならないとし、その1つの例としてAppleの社員には、プレゼンテーションする時に「問題の課題」とは言わず「オポチュニティー」と呼べと言っていて、問題イコール、ビジネスチャンスという認識を持たせてるようにしていると説明し講演を終えました。

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