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H氏からの手紙
June 2000 MACお宝鑑定団 
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PowerPC 750CX/750CXe Architecture

●Mac Power誌に連載されている「改造道」の著者である今井氏が、PowerPC 750CX/750CXeに関しての投稿を寄せてくれました。(内容に関しての御質問等は、直接御本人宛にメールをして下さるようお願いします。)


先日、IBMから新しいPowerPC750シリーズである、PowerPC750CXがリリースされた。(以降、750CXと略す)この750CXは、従来のG3プロセッサーであるPowerPC750に、バックサイドキャッシュメモリーを内蔵(オンチップ)したものである。その容量は256KBとやや控えめながら、CPUと同速度で動作する。

これはちょうど、1年ほど前のPentium IIとCeleronの関係に似ている。スロット1パッケージの中に、CPUコアと512KBのバックサイドキャッシュを搭載したPentium IIと、128KBのキャッシュメモリをチップダイに内蔵してローコスト化を実現したCeleronである。

バックサイドキャッシュメモリをプロセッサーチップの中に内蔵したことの意義は大きい。というのも、最近のG3プロセッサーは400〜500MHzと非常に高速だが、これに組み合わせるための200MHz級の高速SPSRAMの価格はまだまだ高い。しかし、G3プロセッサーはバックサイドキャッシュを搭載しないとその能力の半分近くしか発揮できないのは周知の事実である。このため、PowerMacを除く各モデルでは、バックサイドキャッシュの動作速度をCPUクロックの50%から40%に引き下げることで、コストの上昇を抑えつつ性能を維持してきた。だが、このままクロックを引き上げるには、やはりバックサイドキャッシュメモリの内蔵は避けて通れない道であることは、既に1GHzもの高クロック化を実現したPentium III/Athronの例を挙げるまでもなく明らかである。なぜなら300MHzを越える高速SRAMは非常に高価であり、また400MHzを越える高速SRAMをパソコンに組み込むことはコスト面で不可能であるからだ。そして750CXは初めて2次キャッシュメモリを内蔵した記念すべきPowerPCなのである。

同速で動く256KBのバックサイドキャッシュがどのようなパフォーマンスをもたらすかと言うことに関しては、IBMから公表されたPowerPC 750CX Product Brief (PDF)で少し述べられているが、同じ容量の外部型バックサイドキャッシュに比べて約5%高速、512KBの外部バックサイドキャッシュに比べると約5%劣るともある。これはあくまでもSPECint95の結果に過ぎないが、750CXの性能を示す一つの指標ではある。だが、750CXの最も重要なポイントはその価格にある。IBMの発表によれば、この新プロセッサーは従来の同クロックのG3プロセッサーとほとんど変わらない価格で提供されると言う。これは画期的なことだ。というのも、バックサイドキャッシュという高価なパーツと、200MHz近い動作速度を持つバックサイドバスの外部配線を必要としない750CXでは、それだけでかなりのコストダウンが可能になるからだ。特に消費電力や発熱面での制約の大きいPowerBookやiBookなどのノート型モデルではこの差は大きい。今まで200MHzで動作するバックサイドキャッシュに3W近い電力とCPU約2個分の基板面積をロスしてきたのだから。

新しく750CXに採用されたパッケージは、従来のCBGA(セラミック・ボール・グリッド・アレイ)と呼ばれるものからPBGA(プラスチック・ボール・グリッド・アレイ)と呼ばれるローコストなものに変更された。このPBGAは表面全体が銅製のヒートスプレッダーになっており、広い面積でヒートシンクなどに接触できるようになっている。チップ全体のサイズは、現在のG3プロセッサーよりも一回り大きい(25mm角 -> 27mm角)が、中央部にはボールグリッドを配置しない構造とし、ピン数は360本から256本に減っている。これはバックサイドバスの廃止によるもので、形状はともかくとして本数自体はバックサイドキャッシュを接続できないPowerPC603eやPowerPC740の255本に近い。(但し信号線の仕様は一部異なる)その外形上の変更などによって、少なくとも今までのG3プロセッサーとそのまま置き換えられるものではないものの、そのコストダウン効果を考えると再設計もやむを得ないと考えられる。

cbga.jpg
旧CBGAパッケージ

pbga.jpg
新PBGAパッケージ


750CXには最新の7層メタル銅配線技術と、0.18μmという微細プロセスが採用されている。このため従来の銅配線G3プロセッサーである750Lシリーズと比べても、その消費電力が約20%ほど低減されている。しかも、これはオンチップのバックサイドキャッシュを含んだ消費電力である。従って、典型的な400MHzのシステム同士では、バックサイドキャッシュを含めたCPUモジュールの消費電力全体は、おおよそ半分近くにまで低減できる計算になる。消費電力の低減はすなわち発熱量の減少であり、特にノート型モデルでは大きなメリットをもたらすものと想像される。

この750CXの次には、いよいよ750CXeが控えている。750CXeは750CXをベースとして、SOI技術の導入によってより高クロック動作を目指すもので、現在は700MHzまでのロードマップが公表されているが、恐らくIBMはその先も見据えているだろう。CPUの内部クロックの更なる高速化のためにはバックサイドキャッシュの追従が必要だが、外部チップにそれを依存している限り1GBの壁は遠い。つまり、750CXで採用されたオンチップバックサイドキャッシュは、この750CXeとそれに続くプロセッサー開発に欠かせない術として実用化されたと言えるだろう。

そうなってくると、いよいよ難しいのがG4プロセッサーとの棲み分けだ。700MHzで動作する750CXeは、500MHzのG4プロセッサーを「ユーザーが日常行う大半の処理において」上回ることは想像に容易い。しかも、バックサイドキャッシュを内蔵する750CXは極めてコストパフォーマンスが高い。Appleは今後、厳しい選択を強いられることになるだろう。

さて、最後に750CXの持つ落とし穴についてご報告しておかなければならないだろう。既にデータシートを読んだ方ならお気付きかとは思うが、750CXのユーザーズマニュアルには次のような記述がある。「現在のバージョンの750CXはダイナミックパワーマネージメントをサポートしていない。従来の750はこの機能をサポートしており、将来のバージョンの750CXはこの機能を復活させる予定である」と。

参考資料
PowerPC 750cx Product Brief (PDF)
PowerPC 750cx Data Sheet (PDF)
Images for the Press


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