●おはようございますという挨拶と共にJobs来場。
今回のWWDCには3,800人が参加、これはADCに登録しているデベロッパのおよそ1%に当たる。
最初に、「Update(最新情報)」から。
・AirMac Extreme
AirMac Extremeが採用したIEEE 802.11gが先週に正式に承認された。Appleもこれに対応したAirPort(AirMac)
3.1をリリースした。Appleは世界に先駆けて802.11g対応製品を発表したが、これまでおよそ30万台のAirMac
Extreme対応製品を出荷した。
・Retail Store
最初のRetail Storeが開店してから24ヶ月、現在では全米で58店舗が開店して、およそ1,700万人の来場者があった。今年にはシカゴ、サンフランシスコ、東京にそれぞれ1店舗出店させる予定。シカゴは今週末、サンフランシスコは来春、東京は銀座に来年オープン予定(それぞれの完成予想CGも披露)
・iPod
第三世代のiPodを出荷している。さらに薄くなったデザインとDockが好評。本日で累計100万台目のiPodを出荷した。
・iTunes 4
iTunes Music Storeを8週間前にオープンして、先週の土曜日までに500万曲販売した。iTunes 4のTVキャンペーンを披露(オサマビンラディ似の人物が踊りながらiTunesの宣伝をしているアメリカンジョーク)
・Safari
1月にベーター版をリリースしてから、およそ500万のダウンロードがあった。ベーターテスト中にタブブラウザ機能の追加など、様々な機能の追加を行った。半年のベーター期間を経て、本日1.0のダウンロードを基調講演後に開始する。なお、アプリケーションでもSafariの機能を利用したいデベロッパーの要望に答えて、Safari
SDKの配付も本日開始する。
次に、「Mac OS X」について。
アクティブユーザーは過去2年間で50万から700万に、ネイティブアプリケーションも過去2年間で500本から6,000本に急増した。けれども、Mac
OS X v10.2は本日で終了した。
Mac OS X v10.3 "Panther"を本日発表する。Jaguarと比べて100の機能が追加された。多数の新機能の中から、以下に絞って紹介する。
・新しいFinder
JaguarのFinderは"Computer Centric" (コンピューター中心) だった。そのために、からむ表示でホームディレクトリに辿り着くには4階層にも入らなければならなかった。
これに対して、Pantherの新しいFinderでは、"User
Centric" (ユーザー中心) に設計された。つまり、左側のペインにハードディスク、ネットワーク、メディア、iDiskや、ホームディレクトリのファイルなどが表示されて、ユーザーは右側のペインを使って簡単に望みのファイルにアクセスできるようになった。もちろん、表示はカラム表示やアイコン表示なども選択できる。さらに、検索もより高速になり、ActionボタンによるFinderアクション、ラベル機能の復活、サーバーの種類に依存しないDynamicNetworkブラウジング、Open&Saveパネルの復活など、さらに使いやすくなっている。
・iDiskの拡張
これまではiDiskに手動でファイルやフォルダのアップロード・ダウンロードを行っていたが、Pantherでは自動で行ってくれる。さらに、一つのiDiskに対して複数のMacがシンクロできるので、PowerBookなどのポータブルMacとデスクトップMacのシンクロに便利。
・Expose (eの上には強調記号)
複数のアプリケーションでたくさんのウィンドウを開くと、今自分が作業を行いたいウィンドウが分からなくなる時が多い。これを解決するのが、Exposeである。
<ココでJobsのデモ、Exposeの3つの便利な作業方法を実演>
開いている全ウインドウをすぐに見る、特定のアプリケーションの全ウインドウをすぐに見る、デスクトップにある全アイテムをすぐに見る、といった3つの便利な作業方法をQuartz
Extremeの機能を利用して実現している。詳細な設定は、システム環境設定で行える。
・FileVault
最近ではポータブルコンピューターの盗難が多く、盗難された際に個人の重要情報の流出する恐れがある。そのため、一つのチェックボックスを有効にするだけで、自分のホームディレクトリのフォルダを全て暗号化して、セキュリティを付加する事が出来る。
・Mail
全ての機能を高速化。さらにHTMLメールはSafariのエンジンを使ってレンダリングを行うので、非常に高速で美しい表示が可能に。アドレスを全てオブジェクトとして扱う事が出来る。そして、スレッド表示に対応。
<ココでJobsのデモ、Mailでのメールアドレスが従来の〜@〜と入力すると、自動的にその人の名前に変化したり、名前から複数のアドレスを検索で
きたりといった機能を実演>
・IPsecベースのVPN
Windowsで標準搭載されている、業界標準のIPsecベースのVPNを採用した。PantherとPanther Serverでは標準に搭載している。
・内蔵のファクス機能
印刷ダイアログに[FAX]ボタンが追加されて、アドレスブックに登録した相手に内蔵モデムからFAXを送信可能に。
・Pixlet
PIXARから技術提供してもらったハイエンドのビデオコーデックを標準搭載。フィルム解像度、画素当たり48ビットのフルカラー画像にも関わらず、ハーフサイズのHD並の高解像度(960X540)の画像がさらにインターレス方式ではなくフルモーションでリアルタイム再生が可能。Pantherでは特別なハードウェアが必要なし。
・Preview
最速のPDFビューワを目指して開発、どんなアプリケーションからもPDFを作成できる。さらに、PSからPDFに変換可能で、Pantherを使えばインクジェットプリンターが高価なPSプリンターの代わりになる事をアピール。
<ココでJobsのデモ、PDF 1.4のレンダリングリファレンス(978ページ)をWindows
Acrobat 6とPantherのPreviewで比較。スクロールではWinでは71秒かかるが、新しいPreviewではたった28秒で終了するのを実演>
・Fast User Switching
Finderメニューの右上端に現在ログインしているユーザー名が表示、このメニューを使って、実行しているアプリケーションを閉じずに別のユーザーに切り替え可能。さらに、ユーザーによってはパスワードで切り替えの制限も可能に。
・FontBook
インストールされているフォントの管理が可能、検索が簡単で、書体見本のプレビューも容易に。
・iChat AV
Jaguarでユーザーの25%が利用しているiChatがiChat AVに進化した。従来のテキストチャットから、音声とビデオチャットも可能に。iChatのビデオチャットは究極のインスタントメッセンジャーで、特に設定をする必要なく、スクリーン名だけでインスタントメッセージが可能に。どんなFireWireカメラやDVムービーカメラでも利用できる。56Kのアナログ回線だったら音声チャットを、DSLやCATVやT1などのブロードバンド回線だったら、ビデオチャットが可能。
<ココでJobsのデモ、まずは別の場所のPhill
Schillerとのビデオチャット。このチャットが面をフルスクリーンに出来る事を実演。その後、フランスのJobsの友人と最初は音声チャットで、その後友人がカメラに接続すると自動的にビデオチャットが可能になって、エッフェル塔をバックにビデオチャットを実演。さらに、Jobsにチャットで呼び出しがかかってきて、応答するとなんとアルバート・ゴア前副大統領(現Apple取締役)からのビデオチャットを実演した。
iChat AVはPantherでは標準付属、Jaguarでも利用可能(ただしJaguarでは29ドル)本日からパブリックベータを配付、ベーター利用期間は12月末まで。これらの機能を満載したPanther
Developer Previewは本日から配付、年内に129ドルで販売予定。
<ココでJobs、「我々は2003年には...」と言うと、獲物を狙って歩くPantherの映像が流れる、「これに対してあちらの陣営は、2005年、いや2006年頃に...」と言うと、牧場でぼーっと立っている肉牛(テキサスロングホーン=次期Windowsのコードネーム
「Longhorn」から)の映像を長めに流して、聴衆が大爆笑。最後にJobs「いや、我々はMicrosoftと友好な関係だから、このビデオを流した事で機嫌を損なわなければいいのだが」と弁解していた>
・iSight
先ほどiChat AVで使用していた小さなカメラを紹介。iChat AV専用のビデオカメラで、30フレーム、解像度は640X480、24ビットフルカラー対応、内蔵マイクロフォン、FireWire接続でバスパワー
対応、PowerBookやCinema Displayの液晶の縁などにマウント可能、149ドルで本日より発売。なお、この基調講演に参加したデベロッパには無料で配布する事を発表。
ココでJobs、米国でチャットカメラとして売れているiBotとiSightを比較して、その画質の良さやチャット向きのマウント位置の自由さをアピール。
・Xcode
最新の開発ツールをPantherから提供。高速のコンパイラGCC 3.3を搭載、それでも新しいFinderのコンパイルにはXcodeが377秒かかるのに対してCode
Warriorが223秒。これに対してXcodeはもう1台追加して分散処理すれば208秒に、もう3台追加して合計4台でコンパイルすれば僅か96秒でコンパイルできる事を発表して、Xcodeのクラスタ処理の優位性をアピール。
さらに、従来の開発では[Stop][Debug][Compile][Link][Run]といった5段階の「Turnaround
Loop」と呼ばれる作業を繰り返してプログラムの開発を行っていた。
Xcodeでは「Zero Link」と呼ばれる機能で[Link]の作業がなくなり、さらに「Predictive
Compile」という機能で[Compile]に掛かる時間は半分になり、「Fix and Continue」という機能で[Stop]と[Run]の作業が無くなるので、開発に必要な作業は
[Debug]1/2[Compile]だけになって、開発時間が大幅に短縮されるとアピールした。全く新しいインターフェイスも搭載したと紹介して、Apple社員番号8番のChris氏がデモを行った。
ココでお約束の「One more thing」の表示。
先週の木曜日にThe Apple Storeで次のような情報が流れた。
<画面にはインターネットで流された、PowerMac
G5のスペックが記載されたApple Storeのスクリーンショット>
これは「Premature Spec」(早まったスペック)ではないか?いや、違う、「It's True」(本当だ)。これだけではなく、世界最速のパーソナルコンピューターであると紹介。
これを実現するのに、Appleは次の3つに取り組んだ。Chip、System、Productsこれらについてそれぞれ説明を行った。
1. Chip
数年前にIBMとパートナーシップを結んで、IBMはPowerPC G5の開発に成功した。64ビットCPUでありながら、32ビットのアプリケーションもネイティブで動作可能。最大2GHzで動作して、1GHzの
FSB、完全なSMPに対応。
PowerPC G5のアーキテクチャーは以下の通り。130ナノプロセス、SOI、5800万トランジスタ、300MMウェハーを採用、完全なフルオートメーションの最新のIBMの工場で製造されている。<ここでIBM
Tech Group Senior 副社長 Dr.John E Kelly氏が登壇、PowerPC 970についての優位性とIBMのPowerPC
970を製造している最新の工場の映像を紹介>
2. System
・G5 System Controller
Appleが設計、PowerPC G5と同じ工場で製造
・1GHz Bus
DDR対応、64ビット、双方向通信、最大6.4GB/sのスループット
・メモリー
400MHz、128ビット、DDR SDRAMをサポート。最大8GBまで対応
・グラフィック
AGP X8に対応、最大2GB/sのスループット
・I/Oスロット
動作速度133MHzのPCI-Xスロット、最大2GB/sのスループット、HyperTransport
・ストレージ
Serial ATA 、最大150MB/sのスループット、HyperTransport
・その他
FireWire 800/400、USB 2.0、光デジタルオーディオ、Gigabit Ethernet、AirMac
Extreme、Bluetooth
3. Product
・シングルもしくはデュアルのPowerPC G5
・最大8GBまでのメモリーをサポート
・全モデルに4倍速対応SuperDrive
・NVIDIA GeForce FX 5200 UltraまたはATI Radeon 9800 Proグラフィックカード
・アルミボディでハンドルのある全く新しい筐体
・4層に分かれて(底から電源、CPU、マザーボード、ドライブやストレージ)各層毎に独立した冷却システム、そのために9コのファンを搭載して
も、35dBAという常温での静かな動作音(PowerMac G4の約半分)
・ラインナップ
まず、Adobe社のGrog Gilley氏が登壇、PowerMac G5と共にPhotoshop新バージョンの出荷を約束、Phill
Schiller氏と共にPowerMac G5/2.0GHz DualとDell Xeon/3.06GHz DualとでPhotoshopのアクション対決、360MBのPIXERの映画『NEMO』のフイル作成を比較。G5の方がXeonよりも処理速度
が約2.1倍高速。
次に、Luxology社の社長 Brad Peebler氏が登壇、Phill
Schiller氏と共にPowerMac G5/2.0GHz DualとDell Xeon/3.06GHz DualとでLuxology社の新しいリアルタイムモデリングソフトのレンダリング対決、G5の方がXeonよりもフレームレートで約2.3倍高速。
さらに、Wolfram Research社の共同設立者Theodore
Gray氏が登壇、Phill Schiller氏と共にPowerMac G5/2.0GHz DualとDell
Xeon/3.06GHz DualとでMathmatica 5の40ステップのフラクタル演算対決、G5の方がXeonよりも約2.3倍高速。
最後に、Emagic社の最高技術責任者 Gerhard
Lengeling氏が登壇、Phill Schiller氏と共にPowerMac G5/2.0GHz DualとDell
Xeon/3.06GHz DualとでLogic Audio 6のThe Matrixの予告編の音楽のリアルタイム演奏対決、Xeonでは正常に再生できないが、G5では半分以下のCPU負荷で完璧に演奏。
一連のデモが終了すると、Jobsは現在でPowerPC
G5は2GHzで動作しているが、12ヶ月後には3.0GHz(+50%)で動作するG5を出荷すると約束、すでにプロトタイプは動作していると説明。
<ココでPowerMac G5のプロモーションムービーを流す>
最後に、これまでのAppleの社員に対して労いの言葉を贈って、今年に入って12インチと17インチのPowerBook G4、Safari、iLife、Keynote、FinalCutPro
4、iPod、iTunes 4、そして本日紹介したPanther、iSight、Xcode、PowerMac G5といった多くの革新的な製品を発表してきた。これからもAppleは「Innovate」を続けていくと話して、基調講演を終えた。
|