松井博著「僕がアップルで学んだこと」:職場環境の改善と社内政治との戦いがリアル
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アスキー・メディアワークスが、1999年〜2009年までAppleのシニアマネージャーエンジニアだった松井博著の書籍「僕がアップルで学んだこと 環境を整えれば人が変わる、組織が変わる」を読んで、Appleという会社についてというより、Appleという企業で管理職に就き、持たされた責任と権限、社内政治と改革について詳しく書かれた本だと思いました。
なので、Apple裏事情といったゴシップ本ではなく、資産価1位の企業に集まる優秀な人材を背景に、トップ企業で管理職を勤めてきた経験談といった内容が多く記されています。
著者は執筆業を生業にしている方ではないので、前半部分の文体は箇条書きな感じで、華のあるエピソードを含んでいないためか読み辛く感じますが、それでも「やること」と「やらないこと」の両方をしっかりと決める重要性の話しは、資産価値1位のAppleとSONYという大グループ企業との比較は面白いです。
Apple VS SONY、Apple VS Googleといった感じで比較されたりしますが、Appleの場合、関連企業はFileMaker社、iTunes社ぐらいで、最近買収したAnobit Technologiesは企業内に取り込まれるなどし、独立性が保たれているのはFileMaker社ぐらいです。
SONYの場合だと、国内関連会社だけで約40社以上もあり、それらを見てみると「これはSONYがやらなければいけない事業なのか?」と確かに疑問視する事業も多い事が分かります。
また、プロダクトの開発にあたっては、顧客のメリットを明快にしたコンセプトを定義し、製品デザインが明確化されたら、それを劣化させないように最前を尽くす事などが書かれています。
その中で、初代Apple TV (1st generation)は「家庭のリビングルームに入り込む」ことがコンセプトだったが、顧客のメリットが明確ではなかった。と振り返っています。
後半部分は、実際に管理職のポジションにあった経験談を元に、オフィス環境の改善方法、自分を含めた部下への評価方法、上司との付き合い方など具体例も含めて非常に詳しく記されています。
特に採用雇用方法やリストラ策などは、ここまで具体的に記されたのは初めてかもしれません。
また、Appleの組織体系は、他の企業と比べて極めてシンプルで、松井氏のポジションからSteve Jobs CEOまで3階層しかなかったことが明かされています。
世界中から天才達が集まった企業内において社内政治は熾烈を極める状態だったそうで、自分自身と部下を含めた担当部署を守るために戦っていたことなども記されています。