WWDC2014 KeyNoteスピーチレポートその3 「Appleという会社は誰のものなのか」
※本サイトは、アフィリエイト広告および広告による収益を得て運営しています。購入により売上の一部が本サイトに還元されることがあります。
その2に続き、WWDC2014の雑感を書きます。今年のWWDC2014は完全に開発者のものとなった。
ここ数年との大きな違いは、ジャーナリストが騒ぎ(そしてわかりやすい)、ボリュームが出るであろうこと間違いないハードウエアの発表はなかった。
案の定、6月2日午前からAppleの株価は前日の期待からの値上がりから、ど〜んと下がり株主と投資家は業績が上がるのか下がるのかわからない状態が数時間続いた。
その後、今回の発表でApple製品の連携強化によってiPhone/iPadユーザーがMacを購入する可能性がさらに高くなった事と、健康・家電分野の周辺装置を巻き込んださらなるエコシステムの発展が見込めることが判明し、3日の終値は前々日の株価に戻っている。
ほとんどの会社は会社の目的の大きな部分を「利益を上げる事」としている。利益によって法人税で社会還元し、従業員の雇用で地域社会の発展を後押しする。そして株主に配当し、投資に対して答えている。
Appleはどうだろう?Steve Jobs氏の時代、株主に配当をしてこなかった。
利益目的の敵対的買収に対抗し、期限を設けない新製品開発を継続するために利益を現金で保有していた。
ユーザーと開発者のための会社だったのだ。
特にSteve Jobs復帰後はCEOが報酬を受け取らないという体制だった。
企業買収も積極的ではなく株主が訴えないほうがおかしい状態がずっと続いた。
マイクロソフトのユーザーは自分の組織の生産性と利益が向上するようにきわめて現実的な製品を選んで使用する。
そのため、組織内の情報機器への投資を押さえる場合、出来るだけ長く使用し、余計な経費がかからないようにOSのアップデートも抑える。
特に人件費と設備費が比較的長い固定費となる日本会社では非常に長い期間、欠陥のある事がわかっているOSと本体を使い続けている。
市場の変化に設備と人員の入れ替えで対応するより、市場が変化しないように業界で歩調をそろえ、生産性を犠牲にしても経費を抑えるほうが有利であるとされてきた。
Googleの顧客は広告を出稿する企業である。株主・投資家はより効果のある広告の方法を注意深く見ている。
Googleのサービスの品質よりは広告バナーの継続的で効果の高い露出方法に興味があるというわけだ。
Facebookは、Googleよりはユーザーよりではあるものの、ユーザーの利便性を投資家が、そんなに強くは関心を払わないのは同じである。
Apple、Steve Jobsは企業も「心」を持てると考えている。企業の心は創業者の考えの具体化である継続的な新製品開発、そして組織内のスタッフの企業の心を伝えようという信念と行動で成り立っている。
そのような製品を受け取ったユーザーはユーザー自身の知的生産性への貢献と共に製品そのものへの愛着が発生するのである。つまり製品へ籠められた心を感じるのである。
これは極端に言えば、反キリスト教的なアニミズム的考えである。神の計画から外れたプラスチックと金属、そしてシリコンの物体に意思や善悪があるわけがないのだが、そこに心を見るわけである。製品の心に善悪がないぶん、邪悪に見えたり神聖に見えたりする。我々日本人は割と自然にこれを受け入れる事が出来る。
今回のWWDC2014のメッセージはこの製品に心を吹き込んで魂のある物を作れば受け取る相手は製品そのものからインスピレーションを受けて新たな体験をし、また新しい体験を提供できるという事もあらためて伝えているように思える。
良い物には魂がある。その存在だけで使っている人がインスピレーションを得てなにかすばらしい事が起きそうな気持ちになる。
今一度この事を思い出してみてはいかがだろうか?
執筆:ガラパゴス・システムズ佐藤徹氏