ダニー・ボイル監督の映画「スティーブ・ジョブズ」レビュー
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東宝東和が、2016年2月12日から全国劇場公開するダニー・ボイル監督の映画「スティーブ・ジョブズ」を先行試写で観ました。(IMDbの評価は7.5)
本作品は、第73回ゴールデン・グローブ賞において、主演男優賞、助演女優賞、脚本賞、作曲賞でノミネートされ、助演女優賞、脚本賞を受賞しています。
また、第88回アカデミー賞において主演男優賞、助演女優賞にノミネートされています。
2013年に公開されたジョシュア・マイケル・スターン監督の映画「スティーブ・ジョブズ(2013)」とは異なり、ウォルター・アイザックソン著のSteve Jobs氏の伝記「スティーブ・ジョブズ」を原案としており、Facebookを創設したマーク・ザッカーバーグらを描いた映画「ソーシャル・ネットワーク」の脚本を手掛けたアーロン・ソーキン氏が脚本を書いています。
これまでにもスティーブ・ジョブズ氏に関する映画は多く製作されていて、テレビ番組としても多数製作されています。
また、時系列を追ったエピソードも数多く公開されてきており、そうした内容から、映画の正確性を検証することもしばしば行われてきました。
本作は、そうした時系列を追った形ではなく、3つの発表会が開催される40分前の裏舞台で起きた出来事として描かれています。
1984年1月24日に、カリフォルニア州クパチーノのフリントセンターで行われた、初代Macintosh(Macintosh 128K)の発表会
1988年10月12日に、カリフォルニア州サンフランシスコのデービス・シンフォニーホールで行われた、NeXT Computerのプロトタイプ発表会
1998年5月11日に、カリフォルニア州クパチーノのフリントセンターで行われた、初代iMac(iMac 233MHz (Rev.A))が発表されたWWDC 1998の基調講演
この映画には、3つの発表会自体のシーンは登場しません。それはスティーブ・ジョブズ氏の言葉「No Backstage On Broadway」に従い、今でも発表会については真実として見る事が出来るからです。
一部の関係者、一部の記者だけが断片的に知ることが出来る「バックステージ」を舞台に、セリフの応酬という形で観客に畳み掛けてきます。
3つの発表会は時間経過の演出のためか、第1幕は16mmフィルムで、第2幕は35mmフィルムで、第3幕はALEXAで撮影されているそうです。
舞台劇の台本のような脚本に、ロイヤル・シェイクスピア・カンパニーの演出家でもあったダニー・ボイル監督は、俳優の動く場所をバミリで順番を指示してまでリハーサルを行ったそうです。
つまり、開期間中に観客に対して同じ演技を見せる演劇と同じように作られている事になり、膨大な量のセリフにも関わらず、このまま3幕の舞台劇としても見せられるレベルに仕上がっていそうです。
スティーブ・ジョブズ氏の歴史を良く知る人にとって、一番違和感を感じるのはおそらく第3幕だと思います。アップルの関係者として、その裏舞台に登場するはずの無い人物がとても多いからです。また、ジョナサン・アイブ氏はじめ、新しいアップルを語る上で重要な人物も登場しません。
第2幕のNeXTについての解釈も妄想と言えるレベルに近いと反発されるでしょう。
ですが、観客は、これが時系列をなぞった映画ではないことは分かっていますし、主人公と絡む俳優が変わると、それまでの人物演出が崩れかねないため、あえて俳優を変えないのは、舞台演出では往々にしてあることです。
登場人物のクリサン・ブレナンは、かなり現実歪曲フィールドに押し込められてる感じがしますが、彼女の著書「The Bite in the Apple」は、スティーブ・ジョブズ関連著書としては評価されるべき内容で、スティーブ・ジョブズ氏の一貫した思想は、娘リサ・ブレナンに対する「父であること それが最良の成果」であることが導出されており、それが映画に影響したのかもしれません。
セリフ量が多く、文字数に制限がある日本語字幕ではカバー出来ていない部分も見られるため、iTunes配信やDVD作品になった時に、日本語吹き替え版があれば、そちらでも再観した方が良いと思います。