iFixit、オープンソース修理マニュアルにより、環境問題に取り組み続ける企業姿勢
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WIRED日本版が、2017年7月04日にWIRED Lab.において、iFixit共同創業者Kyle Wiens CEOを招き「『WIRED』日本版Vol.28「ものづくりの未来」特集発売記念!アップル製品をどこよりも早く分解することで知られる「iFixit」のCEOが来日!」と題したイベントを開催しました。
Kyle Wiens CEOと会って2日目という通訳同席でしたが、その通訳の方が、めちゃくちゃ翻訳能力が高いのにも驚きました。
世の中には修理がしやすい製品とし辛い製品とがあり、Appleの製品の場合、Apple Storeに行くー>修理出来ないー>新しいMacを買うといった具合で、これを当たり前に思ってないか?と会場に問い掛け笑いが起きます。
1990年代の修理は、製品の仕組みを知り、修理マニュアルを入手して、その後修理セミナーに参加して学習する方法が一般的だったが、2010年代は、インターネットで検索して修理マニュアルを得る方法に変わり、その修理マニュアルをオープンソース公開しているのがiFixitだそうです。
Wiens CEOは、ある時、友人に1976年から1985年まで生産・販売された「メルセデス・ベンツ・W123」の修理相談を受け、そうゆうのは検索すれば良いんだよと言って検索したところ、iFixit内に「Mercedes W123 Repair」があることを初めて知ったそうです。
会社の規模が大きくなり、自作されたあらゆる修理マニュアルがiFixitにはあるそうです。
Wiens CEOが大学生時代、色々な分解サイトを巡っていたところ、日本のMacマニアのための最新情報と分解バラし「KODAWARISAN」を発見し、それが日本語でしか書かれていなかったため、これを真似して英語のサイトを始めようと思いつきiFixitを始めたと話しました。
今回の来日にあたり、大阪に出向いて、サイト管理人と懇親したと嬉しそうに話してました。
iFixitは、修理するのに必要な「ツール」や「パーツ」の販売などによって収益を上げており、修理マニュアルは、あくまで自分で修理するための解説書として公開しているそうです。
だからオープンソース修理マニュアルと呼んでいるわけです。
ヨーロッパの政府機関に出向いて自己修理方法を解説したり、アメリカでプロの修理業者に対して修理方法を説明したりしてるそうで、自分で修理する取り組みに関するロビー活動を続けているそうです。
iPhoneの底面には、星形のペンタロープネジが使われており、一般的な工具では開けられないようになっていると説明し、これを簡単に開けられる道具を作って販売し収益としているそうです。
注:個人または非委託修理業者が開けると技的マークが取り消されます。
所有する製品を自分で修理出来るようにするという考え方は、毎年2億トンにも及ぶ電子機器廃棄物を削減することが目標の1つだと話していました。
アフリカでは、危険な産業廃棄物収集で生計を立てている人達も目にしたそうです。
元素の周期表を表示し、iPhoneで使用されている元素を紹介し、リサイクル出来る元素もあるが、34元素のうち半数以上は、リサイクル出来ないと説明していました。
リサイクル不可のものは廃棄物となって蓄積され続けるため、こうした廃棄物を出さないためにも、修理して製品を長く使用続ける事は環境にとって重要だと力説していました。
iPhoneに関する修理は、Appleが、どう思っているかは不明だが、iFixitによって、オープンソース修理マニュアルが全機種用意されているため、自己修理する方が困る事は少ないそうです。
Android用のオープンソース修理マニュアルを約500機種分公開しているが、世界には約1万機種以上のAndroid製品があり、それらを全てカバーするのは簡単な事ではないと話しました。
オーストラリアの「Future proof」が、様々なパソコンの正規修理マニュアルを公開していたところ、東芝から著作権違反だとの警告を受けたそうで、それに対して、iFixitが資金を募り、紹介していた正規マニュアルに該当する東芝製パソコンを買い集め、自らの手で解説したオープンソース修理マニュアル「Toshiba Laptop Repair」を公開するなどの手段に出たこともあったそうです。
Wiens CEOは、中国で、iFixitによるオープンソース修理マニュアルを印刷して販売されているのを知り、実際に購入してみたところ、iFixitによるオープンソース修理マニュアルに加えて、iPhoneの回路図面まで掲載されていたことを紹介し、iFixit以上の修理マニュアルは実在すると話していました。
修理によって新たな雇用を生み出す活動「The Repair Association」を紹介していました。
受刑者に対する職業訓練として修理作業工程を覚えるなどの取り組みに協力しているそうです。
2012年10月26日に「DMCA改正」があり、キャリアの許可を得ていないSIMアンロック(SIMロック解除)が違法となる変更が加えられたのに対して、Wiens CEOらによって見直しに関する草案が作成され、2014年にホワイトハウスは「法律に違反する等のリスクを冒すことなく、消費者はSIMアンロックが出来るべき」という公式見解を出すきっかけとなったそうです。(注:あくまでもホワイトハウスの見解)
農作業のトラクター修理に関して、ハードウェアパーツの修理はなんとか行えるものの、制御部分に関しての修理は、ソフトウェア部分を含め、メーカーの著作物であり、それを改造することは許可出来ないとした問題が起こり、3年の月日を費やして、著作権局から合法であるとの判断を勝ち取ったと紹介していました。
アメリカにおける、いくつかの州では、議会を通じて携帯電話のロック解除立法を押し進め、著作権法の免除を獲得し、修理を行う事を正当な権利だと認めているそうです。
これに対して、Appleなどは、その州でハッキング行為を行った場合、合法と判断されかねないと反対しているそうですが、Wiens CEOは、修理で収益を得たいという本音が見え隠れしていると意見していました。
ジョナサン・アイブに影響を与えたとされるドイツのインダストリアルデザイナーDieter Rams氏の言葉「良いデザインは、長持ち」「良いデザインは、環境に優しい」を引き合いに出し、iFixitが修理の難易度をスコア評価しているのはこのためだと説明していました。
メーカー別修理しやすさ分布を紹介し、MicrosoftとAppleパソコンとタブレットは、修理の難易度が高く、修理出来ないレベルにあるとしながらも、iPhoneに関しては評価7前後で、修理しやすい製品なのだそうです。
この表を公開したことで、複数のメーカーからコンタクトを受けたと明かしていました。
Wiens CEOは、自己修理する権利を主張する理由として「私たちの環境や経済の将来にとって修理は重要な行動です。」と強く訴え続けると話していました。
イベントの後半は、WIRED日本版編集長の若林恵氏との対談形式で行われました。
実際は、ほとんど参加者からの質問にWiens CEOが答えるといった内容でした。
その中で、Wiens CEOは、iFixitを訪れたユーザーに対してアンケート調査を行ったところ、実際に自己修理した経験者は91%にもなり、また、自己修理したメーカー製品を買うと回答した人は95%もいたと明らかにしていました。
対談の中で、Wiens CEOは、ある回路図(詳細は秘密)を示しながら、これまで修理不可能とされていた領域に挑み続けており、環境問題に取り組み続ける企業姿勢はこれからも変わらないと語っていました。
私は、この回路図を初めて見た気がします。
会場に、iFixit特製修理キット「Pro Tech Toolkit」が展示されていました。
このキットは、日本の秋葉館で正規輸入販売されているそうです。
また、iFixit特製ステッカーも配布されていました。