第一回:GAP勉強会「iPhoneアプリケーション10ヶ月の実態とこれから」レポート
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5月29日に東京汐留ビルディングにて開催された「iPhoneアプリケーション10ヶ月の実態とこれから」と題したメディア向けイベントが開催されました。(取材協力:キャスタリア)
講演者は、ITジャーナリストの林信行氏、パンカクの柳澤康弘社長、CRI・ミドルウェアの幅朝徳氏、APPLIYAの椎谷ハレオ社長、ソフトバンクBBの取締役でもある、APPLIYAの取締役、孫泰蔵氏(孫正義氏の実弟)でした。
最初に、林さんは、これまでのiPhone 3G発売で置きたムーブメントについて説明しました。その後、IT業界の主戦場が、パソコンから携帯電話に変わってきたと述べました。(今まで林さんの講演をなんどか取り上げてきているため、重複している部分を省かせて頂きます)
Google、MySpace、Facebook、LinkedInなどはiPhone対応を行なっていて、さらに海外では、メディア向けのインビテーションが、iPhoneに最適化されたものが送られてきたりして、凄い事になっていると紹介。
また、NewYork TimesやTIME誌などでiPhoneアプリの紹介記事が書かれていて、そこで日本人のfladdictさんというデベロッパーが開発したQuadCameraが取り上げられている。
ガラパゴス化しているのは携帯端末ではなく「人」ではないかと考えて、日本だけで考えているのは問題ではないかと説明していました。
今年の末には、世界で一番英語が話せる人口が多い国は「中国」になるようで、また、インドのIQトップ25%の人の数は、米国の人口を上回っている状況にあり、世界は急速に変わりつつあることを知る必要があると説明しました。
日本のメディアでは、iPhone 3G発売で248番組で取り上げられたが、それらは、絵文字が使えないとか、ワンセグが使えないとかネガティブな事しか取り上げていなかった。
日本と世界のメディアとのギャップを埋めるため「Global Advanced Phones 研究会」(GAP研究会)を立ち上げ、メディアの方々のために勉強会を行ってゆこうと考えていると説明しました。
次に、パンカクの柳澤氏が「iPhone3.0によって変わるiPhoneアプリケーションのビジネスモデル」と題した講演を行ないました。
同社のLightBikeについて、最初に無料版をリリースし、ランキングに入ったタイミングで有料版をリリースした。
そして2009年2月に米AppStore有料アプリランキングで1位を獲得したと紹介し、無料版/有料版合わせて150万ユーザー以上にダウンロードされている。
これはiPhone/iPod touch合わせて3,700万台以上売れているので、その4〜5%の端末にインストールされている計算になると紹介。
現在1,800ほどの評価を付けてもらっているが、50%は5つ星をつけてくれていると説明した。
iPhone OS 3.0に関しては、NDAにより公開された情報だけで話すと、デベロッパーからすると「アプリ内決済」であると考えていて、これはi-mode革命の世界版だと説明。
LightBikeは2.99ドルで販売しているが、最初ランキングに入れるために1ドルで販売を開始した。
数10万ダウンロードあったところで数千万という収益があったわけだが、継続的な収益ではなく売切り型であるため厳しいと言わざるおえないと説明。
最近は、広告ネットワークが充実してきていて、無料のiPhoneアプリでも、アプリ内に広告を入れる事で、収益を上げられるビジネスも出てきていると紹介。
今までとことなり、無料アプリケーションの位置づけが変わり、無料アプリケーションに広告を付けたり、コンテンツ課金により、継続的な収益を上げるといったビジネスモデルが考えられ、パンカクとしては、コンテンツ課金をつけたアプリを充実していこうと計画していると説明していました。
ゲーム対戦ネットワーク「パンカクネット」を構築し、数分で遊べるネットワーク対戦ゲームを無料配付し、アバター、アイテム課金、プレミアム課金などによって収益を上げていこうと考えていると説明してました。
iPhone以外のプラットフォームにも手を広げてゆくつもりだが、同じように考えているデベロパーは多いのではないかと考えていると述べてました。
次に、CRI・ミドルウェアの幅朝徳氏が「ゲーム開発者におけるiPhone/iPod touchアプリ開発についての調査報告」と題した講演を行ないました。
同社は、ゲームなどのツールを提供する黒子に徹した会社だそうで、全世界1,900作品のゲームタイトルに採用され、約2億枚の流通パッケージに導入されてると紹介。
CRIが行なったゲーム開発社向けのアンケート結果「ゲーム開発者におけるiPhone/iPod touchアプリ開発についての調査報告書」を紹介し、iPhoneに興味があると答えたのは97%にも達し、開発実績があると答えたのが34%、着手予定と答えたのが38%だったと紹介していました。
iPhoneでもっとも魅力あるセンサーという質問に対しては、マルチタッチが59%、加速度センサーが26%という結果だった。
iPhoneで魅力的なものという質問に関しては、市場規模の大きさ、アプリ購入の手軽さ、価格設定の自由度、マルチタッチで直感的だとの回答が多くあり、アプリの価格帯については、0〜350円が33%、450〜600円が39%、700〜1200円が24%という結果になり、iPhoneアプリでプレミアム価格といわれる価格帯を狙っているメーカーが結構多いことが見てとれると紹介した。
iPhoneアプリの開発部門について質問したところ、家庭用ゲーム部門が32%、携帯部門が26%、携帯型ゲーム部門が20%という結果となり、これは、ダウンロード販売ソリューションを持っているPS3、Xbox 360、Wiiが尻窄み傾向にある中、マルチプラットフォームを考えた場合、同じ部門が開発するのが効率が上がることが理由ではないかと分析していました。
ミドルウェアの利用に関しては、品質向上や工数削減出来るのであれば利用したいと回答したのが95%にも達し、具体的にどのようなミドルウェアが欲しいのかと質問したところ、ダントツでオーディオだと説明。
それらの結果から、ゲームクリエイターはiPhoneに興味津々で、開発しやすい環境やミドルウェアを欲している。Macでの開発、マーケティング手法が心配ということがわかったと結論づけていました。
今回、CRIは、新しいミドルウェアとして、クラウド対応型のマーケティングツール「CLOUDIA」を発表してました。
等しくアプリが売れるようなミドルウェアになる予定で、リリースは今年の夏を予定していて、詳細については後日発表するそうです。
最後の講演者として、APPLIYAの椎谷ハレオ社長が「iPhoneアプリ市場の分析および今後の展開」と題した講演を行いました。
Top 100に残るアプリを継続調査していて、日本のApp Storeの場合、最初は出ては消え出ては消えだったのが、4月頃から定着しつつあることがわかったと説明。
アメリカのApp Storeを見てみると、この定番化の傾向が1月ぐらいから出始めている。
1位に残るアプリを継続調査した結果、まず日本のApp Storeの場合、1〜2日で、最大で15日と短い。
それに対し、アメリカのApp Storeだと1位の滞在期間が長く、最大25日で、その後定番化すると説明していました。
次にジャンルの傾向として、日本のApp Storeの場合、100位以内で調べると、ゲームとエンターテイメント系が多いが、合わせても半分以下
それに対し、アメリカのApp Storeだと、圧倒的にゲームとエンターテイメント系の割合が大きくなると説明していました。
また、価格については、最近の傾向として、Top 100位のアプリは、350円ラインに収束しつつあると説明
Top 10に限定した場合、日本は115円が54%、アメリカは80%以上ということがわかったと説明していました。
講演者とソフトバンクBBの孫泰蔵氏が加わり質疑応答が行なわれた。
Q:台数が公表されないのはなぜか?
林:Appleは国別の台数といったことを公表はしていないが、イギリスとフランスは100万台達成した発表されていることを考えると、日本は発表されていないので100万台に達していないんだろうと思う。
Q:売れる要素があれば教えてほしい
椎谷:LightBikeと同社のエヴァアプリがメディアに取り上げられた数は約60社で同じだった。日本でのランキング滞在日数は同じだったが、アメリカでは100位以下だった。これは、LightBikeが向かい合って2人で楽しめるというスタイルが受けたのではないかと思っている。日本の場合は、携帯電話のライフスタイルが成熟しているため、プレミアム価格帯のアプリでも良いものは売れるがアメリカでは難しい。しかし、それに必ず合わせなければならないとは思っておらず、アメリカの成熟度が低いからだと考えている。
Q:iPhoneとAndroidについて
林:アメリカではすでに販売されていて、iPhoneより6倍売れている。ただ、アプリをどこで購入するか、アフィリエイトを絡めて紹介する側のモチベーションを高めるとかいったトータルソリューションが確立されていない。ただ、今後に期待したいとは思っている。
柳澤:単一機種のiPhone/iPod touchだとリッチな3Dコンテンツを動かせる端末が全てであるのに対し、Androidの場合だと機種によって動かすのが難しい端末が出てくるかもしれない。
幅:iPhoneはOSと端末を両方指し示せるが、AndroidはOSしか指し示せない。同社のCRI Audioというミドルウェアは、Xbox 360やPS3といったマルチCPU向けに開発したものだったが、iPhoneに移植してみたら動いてしまった。そこから、カタログスペック以上のポテンシャルがあることがわかった。
孫:Android端末とiPhoneを比較すると、Android端末は、これからiPhone以上のスペックを持ったものも色々と出てくるだろうと思う。それはパソコンと同じなんだけど、携帯端末だけでしか使うのではなく、メーカーが何かハードウェアを開発しようと考えた場合、有料のOSよりかは、無料のAndroidをベースとして採用し、その上にミドルウェアを乗せて拡張して、様々なものが出てくるのではないかと考えていて、iPhone的なエコシステムとAndroid的なエコシステムを比較するのはどうかと思う。