InDesignコンファレンス2008 東京:字形にこだわる
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InDesignコンファレンス2008 東京は、DTPに関わる人向けのセミナーのため、文字にこだわる人達のセッションもいくつか用意されてました。
1つは、小説家の京極 夏彦さんによる「パソコンをワープロ以上にしたInDesign」というセッション。
江戸時代後期の作家、曲亭馬琴が著した「南総里見八犬伝」は、彫師が内容に合わせて、字も挿絵も全て版木を彫って完成させていた。どの彫師が彫るのか、どの刷師が刷るのかによって売れ行きが変わった。全てがトータルで名作となり、著者はそれを当然意識していたはず。
現代でも南総里見八犬伝は読めるが、それは曲亭馬琴が想定したレイアウトになってるはずがなく、書き手が面白いと思わせたい部分と違ってるはずで、京極さんは、自分が読ませたい字形でリズムを作り、誌面のデザインによって、意図したデザインによって雰囲気を作る事にこだわってるのだそう。
そのため、小説雑誌に掲載されたあと、新書、文庫へと形を変える度に、全て見直し修正を加えるのだそうで、そうした表現手法に、InDesignの「合成フォント」が欠かせないと説明してました。
2つ目は、大日本タイポ組合の塚田哲也氏と秀親氏による「タイポグラフィとInDesign」というセッション。
2人は、デザインを文字だけで表現することを心がけているそうで、例えば「耳」という漢字を「レコード」という4文字のカナで表し「れこーど」と読むみたいな、一瞬??と思うけど、一般的な潜入感に対して、挑戦と遊びを混ぜたアーティスティックな表現手法をいっぱい製作してるんだそうです。
この見た目と読みとが違うグラフィックを実現するために、InDesignの「合成フォント」が欠かせないと説明してました。
最後は、ブックデザイナーの祖父江慎さんによる「驚愕のInDesign 使い」。ご本人のキャラクターは、かなりぶっ飛んでるんだけど、話の中に垣間みれる、日本語の現代印刷組版に対する深い知識は、相当のレベルだと思います。
その祖父江さんのこだわりは、作家が意図する読ませ形を実現する事に置かれていて、InDesignの「合成フォント」で、そのこだわりのレベルが凄いと思います。
また、フォントのデザインに対しても造形が深く「人が作ったフォントデザインを、そのまま使うなんて、なんか押しつけられてるみたいで嫌じゃないですか?」という事をさらっと言いながら、受売りのままではいけないんですよ。的なメッセージを潜ませてるところなんか凄いと感じました。
また、InDesignに対して、わかりにくい設定項目を理解しやすい言葉にしてほしい。という要望も、確かにそうだ!と思うところもあり、「基本新潮組み。ちょっと岩波、ちょっと講談社」とかギャグみたいだけど、英語表記を単に翻訳表現する事に対してのアンチテーゼでもあり、より理解されるために、言葉を作り出すという努力をして欲しいみたいなメッセージが感じられました。
3組ともこだわってるのは、書体デザインそのものではなく、そこに含まれる字形であって、それを合成フォントによって、小さくしたり、太らせたりしたりしながら、ベストな字形を探し出し、それを、一作品毎に一から考えてるという部分だと思います。
ちなみに、3組とも、字游工房の「游明朝体」を気に入って使用されてる印象でした。
MACお宝鑑定団「The InDesign Conference: 東京 2008 レポート」