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Appleシリコン「M1チップ」高性能の秘密

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Apple M1チップ

Apple M1チップ

Apple M1とApple A14X (Z) Bionic

今回のAppleのM1チップ搭載Macコンピュータではっきりわかったことは「Apple M1チップ」というのはApple A14 Bionicを強化したSoCで、従来のネーミングで言えばApple A14X BionicまたはA14Z Bionicと呼ばれるチップであること。

高性能コア(Firestorm)4基と高効率コア(Icestorm)4基、独自設計のGPUコアを7または8基、Neural Engineコアを16基。

この仕様はiPhone向けのApple A12 BionicからiPad Pro向けのApple A12X/Z Bionicを作った時と同じアプローチで、Apple A14 Bionicを強化(X/Z化)したら当然こうなるよね?というスペックだ。


iPad Pro 11-inch (2nd generation) vs iPad Air (3rd generation)

iPad Pro 11-inch (2nd generation) vs iPad Air (3rd generation)

実際の性能もこれを見事に裏付けている。例えばGeekBench 5のシングルコアスコアとマルチコアスコア。

Apple A12 Bionicを搭載するiPad Air (3rd generation)のCPUスコアは、シングル1114、マルチ2475。

Apple A12Z Bionicを搭載するiPad Pro 11-inch (2nd generation)のスコアはシングル1124、マルチ4715。

シングルコア性能は変わらないが、高性能コアが2基から4基に増えたことで、マルチコアスコアは約1.65倍に増えている。


MacBook Air (M1, 2020) vs iPad Air (4th generation)

MacBook Air (M1, 2020) vs iPad Air (4th generation)

一方、Apple A14 Bionicを搭載するiPad Air(4th Generation)のスコアはシングル1589、マルチ4242。

そこから想定されるApple A14X/Z Bionicのスコアはシングル1590、マルチ7010。

実際のApple M1チップ搭載Macコンピュータのスコアはシングル1730、マルチ7563で、その差は7〜8%。

実際にはiPad Air (4th generation)の動作クロックは2.99GHz、AppleのM1チップ搭載Macコンピュータのそれは3.19GHzなので、動作クロックは実質6%アップ、ほぼ計算通りの性能である。


ifixitより

ifixitより

MacBook Air (M1, 2020)の下位モデルにはGPUコアが7基に減らされたApple M1チップが、それ以外のモデルには8基のApple M1が搭載されているが、これはApple A12X Bionic(GPUコア7基)と同A12Z Bionic(GPUコア8基)と同じアプローチだ。

Appleシリコンの中でもGPUコアはシリコン上のフットプリントが大きく他のコアに比べて歩留まりが低い。製造時に不良となったコアブロックを無効化(Disable)して下位モデルのプロセッサを派生させる、これはIntelのCoreプロセッサやAMDやnVIDIAのGPUでも普通に行われていることだ。

本来なら捨ててしまわなければならない欠損品を再利用する手段としては極めて有効で、GPUコアが1個減ったからと言って実使用上ほとんど影響ないのはもちろん、コアが少ないことすら一般的なアプリを使っている限りまず気がつかないだろう。(ベンチマークは別として)


MacBook Air (Retina, 13-inch, 2020) vs MacBook Air (M1, 2020)

MacBook Air (Retina, 13-inch, 2020) vs MacBook Air (M1, 2020)

Apple M1の高性能のカギ

Geekbench 5でApple M1チップとインテルプロセッサのベンチマークを比べてわかることは、とにかくシングルコア性能が高いことだ。

近い動作クロックの第10世代モバイルCoreプロセッサ「Ice Lake」と比較すると、およそ5割増し(150%)のシングルコア性能を発揮する。つまりコアあたりのIPC(クロック周波数あたりの処理性能)がべらぼうに高い。

そのカラクリについては、AnandTechが詳しく解説してくれている。


AnandTechより

AnandTechより

Apple A14 Bionicの高性能コア「Firestorm」は、コアあたり8命令デコードでALUが6基搭載されているという。

ALUとは簡単に言えばCPUコアの演算器であり、CPUの心臓部だ。

命令デコーダは与えられた命令を演算器で実行させるための準備をする解析器で、頭脳の中の頭脳とも呼ばれる部分。

ちなみに「Ice Lake」が採用するSunny Coveアーキティクチャの場合、コアあたりのALUは4基、5命令デコードだ。


Apple M1

Apple M1

Apple M1チップは単純に見てもその1.5倍の演算器と1.6倍の解析器を備えているわけだから、シングルコア性能が5割増しなのも頷ける。もちろん、ARMv8-AアーキティクチャのプロセッサコアとしてもダントツのIPCだ。

プロセッサコアの性能をここまで引き上げると、そこに命令やデータを送り込むメモリシステムやファブリックの性能もそれに合わせて向上しなければならない。

いくら心臓部が速くても周りが付いてこれないのではその性能を充分発揮できないからだ。そのためにApple M1チップでは、特殊なキャッシュ構造とファブリック、そして低遅延で広帯域なユニファイドメモリアーキテクチャを採用した。

このあたりは次回改めてご紹介できれば幸いだ。


執筆:MysticRoom Tak.


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