Adobe MAX 2013 基調講演レポート、Photoshop CCの手ブレ補正ツールは Cloud のエンジンにも搭載され、将来的にOpenAPI として公開される予定
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Adobeが、Adobe MAX 2013において、クラウドサービス「Adobe Creative Cloud」にネイティブに対応した新世代クリエイティブツール群として Adobe 「CC APPS」デスクトップアプリケーション群を発表しました。
まずは、Photoshop CCのデモから。
Photoshop は CC となった事で、Photoshop Extended が無くなって Photoshop のみとなります。
ただ、これは名称上の都合であり、機能としては実質上「Photoshop Extended のみとなって、Photoshop の機能が全体として底上げされる」という事になります。
新機能としては、デジタルカメラの RAW ファイルをスマートオブジェクト化する事が出来るようになり、これによってRAWファイルを RAW現像プラグインにて非破壊編集が出来るようになります。
また、静止画の手ブレ補正ツール (Shake Reduction) が付いたことで、長時間露光させた写真などに対して大きな効果を出すことが出来ます。
シャープ (Sharpen) ツール もアルゴニズムが改善され、効果適応後にノイズが出にくくなります。
続けて、Adobe Illustrator CCの紹介、文字タッチツールが搭載され、文字のサイズ変更やシャドー方向の調整などを直感的に出来るようになりました。文字タッチツールと名付けられたのは、この機能が Windows8 のタブレット機能にも対応しているから。タブレットモニタに接続された Windows8 では、タッチ操作によって操作が可能です。
また、カスタムブラシ機能も強化が行われ、写真データなどのベクターデータでは無い画像からブラシを作成出来るようになっただけでなく、ブラシで描いた際に伸長する可変領域と、伸長しない不可変領域を指定出来るようになりました。これによって、画像を使って矢印を描いた際に自然な表現となります。
次は、After Effects CC。3D アプリケーションの「Maxon Cinema4D」とスムーズに連動する「ライブ3Dパイプライン」が組み込まれたことで、3D画像をビデオに自然に合成させる事が出来ます。設定の追い込みを掛ける際にも、データ変更が実データに素早く反映されますので、試行錯誤をしての映像クオリティ追い込みが素早く出来ます。
また、輪郭抽出のエンジンとして Photoshop に搭載されていた境界線抽出ツールが入ったために毛髪一本一本までを素早く全自動で抽出して切り抜くことが出来ます。
これらのクリエイティブツールで作成したデータを公開するのは、現在では主に Webとなり、そのための編集ツールとして「Edge」群が用意されています。
今回のアップデートによって、複数の解像度での表示に対応するようにリフローする CSS をダイナミックに生成する「Edge Reflow CC」が追加されただけでなく、「Edge Animate CC」ではより自然なオブジェクトのアニメーションを実現したり、「Edge Code CC」では、コード内でのカラープレビューなどへの対応、「Edge Inspect CC」では実機での表示テスト作業の簡易化や問題発生時の情報収集機能などが搭載されました。
このような新機能を満載した Adobe CC ですが、これまでの CS で見られた「アプリケーションごとにインストール、管理、アップデートをする手間が煩わしい」という問題を解決するために、Creative Cloud Desktop App が用意されます。
これは、OS X Mountain Lion に搭載された Notification Center と MacAppStore を統合したようなアプリケーションで、Adobe CC契約者がアプリを開くと、インストール可能なアプリや TypeKit のフォントがプレビューと共に一覧表示されます。あとは、欲しいアプリやフォントの「インストール」というボタンをクリックするだけでインストール作業が自動で行われます。
Creative Cloud Desktop App で簡易化されるのはインストールだけでなく、インストールしているマシンを変更した際の設定作業も改善されます。
これまではマシンや Adobe CS を再インストールするたびに、自分の環境を1から構築し直す必要が有りました。
しかし、Adobe CC の各アプリケーションには環境設定を Cloud にバックアップする機能が付いており、新規インストールした場合にはバックアップされている環境設定を使って環境を構築するか聞かれるダイアログが表示されます。
ここで同意をすることで、以前使っていた状態とホボ同様の環境が復元され、復元後には AdobeCC アプリケーションが再起動して環境設定が正しく適応されるようになります。
なお、Cloud にバックアップされる環境設定の情報は、アプリケーションごとに異なります。
Cloudの新機能としては、データの簡易差分バックアップ機能もあります。これは、Adobe CC で作成したデータを Cloud に保存する事で、以降「保存」したタイミングのデータが最新10日間分だけ保持されます。保持されているバックアップデータは後ほど好きなタイミングで、好きな状態に戻れます。
10日間の状態保存に限定された TimeMachine と考えると分かりやすいでしょうか。なお、Cloud に保存されるデータ容量の計算については「最新データのファイル容量のみが計算、利用され」て、差分データの容量については Cloud の利用データ容量から除外されます。
Cloudのコミュニケーション機能も「Behance」との統合によって強化されます。
Adobe CC で作成したデータを Cloud にアップロードする事で、限定されたユーザと共有がされ、コメントを受け付けることが出来ます。また、公開設定を変更することで、全世界に対して公開、コメントを受け付けることも出来るようになるだけでなく、そのようにして自身の作成物をアップロードしておく事でポートフォリオとして公開しておくことも可能です。
このような数多くの新機能を搭載し、Cloud と統合された Adobe CC は 2013年06月17日(日本は6月18日)より Adobe CC 契約者はダウンロード可能になる予定です。
また、Photoshop CC に搭載された 手ブレ補正ツールは Cloud のエンジンにも搭載され、将来的には OpenAPI として公開される予定になっています。
この OpenAPI を使うことで他社のモバイルアプリなどでも「Adobe Magic」としか表現できないような高品質の画像編集エンジンが利用出来るようになります。
なお、この OpenAPI の公開時期、方法については未定です。
最後に Adobe の目指す将来の1つの姿として、クリエイティブに特化したハードウェア開発プロジェクトが発表されました。
今回プレビューされたのは、ペン型入力ツールを開発する「Project Mighty」と、定規型の入力補助ツール「Project Napoleon」。
「Project Mighty」は一見すると単なるタブレットデバイス用の入力ペンですが、1つ1つのペンに独自IDが割り振られており、そのIDは Adobe Creative Cloud と連動します。
クラウド統合によって、例えば Illustrator であればProject Mightyに対してオブジェクトを登録、保存しておくことでタップするだけで保存しておいたオブジェクトがコピーされたり、登録されたProject Mightyで他のデバイスをタップした際にも登録しておいたオブジェクトが自動的に入力されるなどが実現出来る可能性があります。
この「Project Mighty」での入力を支援するためのツールが電子定規「Project Napoleon」。
直線や曲線など、代表的なオブジェクトが事前に用意されており、タッチによって描画図形の変更が可能です。「Project Napoleon」によって描画されたガイドに沿って「Project Mighty」を動かすだけで、綺麗な直線や曲線が好きなだけ描けます。
「Project Napoleon」は定規型のツールですが、「Project Napoleon」自身に「Project Mighty」を沿わせて描画するのでは無く、「Project Napoleon」が作り出す電子的な仮想線に沿わせて描くという点がポイント。これによって直線だけでない多彩な線が描けるようになるだけでなく、描画したいディスプレイ上の表示を「Project Napoleon」で隠される事が無くなります。
これらのハードウェアについては将来において考えられる1つの姿という事でのプレビューであり、具体的な発売時期や金額が決まっているものでは有りません。
以上で、Adobe MAX の基調講演は終了。
なお、デモは行われませんでしたが、CSSの編集をビジュアルに行える「CSS Designer」が搭載された「Dreamweaver CC」や、完全64bit化アプリとして書き直されたことで非常に高速化した「Flash Pro CC」も CC デスクトップアプリケーション群の一部として存在します。