大阪DTPの勉強部屋:第2回鳥海修の文字塾「ヒラギノ書体」「游明朝体」「游ゴシック体」「キャップス仮名」のコンセプト(前半)
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大阪DTPの勉強部屋が、字游工房の書体作家鳥海修氏による「第2回鳥海修の文字塾」を開催し、字游工房が手がけてきた「ヒラギノ書体」「游明朝体」「游ゴシック体」「キャップス仮名」の歴史やコンセプトについて講演が行われました。
鳥海氏は、京都精華大学のデザイン学部 ビジュアルデザイン学科 グラフィックデザインコース、金沢美術工芸大学の視覚デザインで授業もされているそうです。
写研から独立し、字游工房が設立されたのは1989年で、1993年〜2001年にかけて「ヒラギノ書体」を作ったそうです。
ヒラギノ書体全部で26万字つくったそうですが、最近はそれを言っても驚かれなくなったんだよね。。(笑)と話し、色々と脱線しつつも、約3時間話してました。
ヒラギノ以前の話しとして、大日本スクリーンの要求は、モリサワのライセンスを受けているが、チラシ組版機器(IP)に使う書体を自前で欲しいということで、全ての書体が同じ土俵に乗っても生き残れる、大日本スクリーンにとっての最終的な書体体系を示してほしいと言われたそうです。
字游工房の考えとしては、画像と文字の融合を考え、書体を所有するにあたってはスタンダードな書体が望ましく、書体体系としては、明朝体、ゴシック体、丸ゴシック体、楷書、行書、隷書、宋朝など基本を充実させ、ファンシー書体も制作することにしたそうです。
大日本スクリーンが所有すべき書体の基本的な考えとして、書体制作においてベーシックを充実させ、カラー印刷に向いたフォント制作をすることにしたそうです。
現状把握として、大日本スクリーンに書体が分かる人がいなかった。そのため、商業印刷物調査を行った。パンフレット一冊に使われる書体数7.5書体、本文、小見出し、大見出しの書体頻度を調査した結果、明朝体40%、ゴシック38%、丸ゴシック12%、筆書など12%が利用されていることが分かったそうです。
それらから、既存書体の分析を行い、イメージ把握、機能(本文用、見出し用、大見出し用など)、印刷物との相性、完成度などを決め「若々しい、さわやか、クリア」の部分にフォントが無い事が分かり、そこをヒラギノ書体のターゲットに決めたそうです。
ヒラギノ明朝体のデザインは、字面は総体的に大きめに設定し、漢字のエレメントは硬質で張りのあるものとするが、幾何学的になりすぎないように注意する。これは、若々しさを表現する上で重要だったと説明していました。
仮名は縦用と横用を制作する上で「側筆」が一般的に使われていたが、横で使用する場合だとバランスが悪くなるので「直筆」の仮名も含めるデザインをする必要があるとボードを使って説明していました。
字面は漢字>ひらがな>カタカナ>アルファベットで、強さはアルファベット≧漢字≧仮名の順になる。
これは現実にはないフラット感を出してリズムを刻めるように考えたと説明した。
ヒラギノ明朝体は、W3とW8を作り、ユーアールダブリューシステムのトレースソフト「IKARUS」を使ってアウトライン化し、それを元に補間して他のウェイトを制作したと説明していました。
仮名は、W3縦用と横用で字間補間調整を行ったそうです。
ただ、今となっては、これは良くないと考えていると話していました。
それは、横組で揃った小説を読んだ時に、必ずしも読みやすいとは思わないと説明していました。
紙手書きした元字をIKARUSで字を打ち直すというのは2度手間になるので、筆て書くのが元字ではなくなったと話し、今は手て書くことはほぼ無くなったそうです。
平成明朝体、ヒラギノ明朝体、JK明朝(游明朝)とで字面を計ったグラフを紹介し、文字がきっちり揃っているのが平成明朝体で、游明朝は大きさに違いが大きいと話してました。
ヒラギノ行書体は、筆耕の田中馨氏に書いてもらった元字を元にした書体で、W4と比べてW8は修正しすぎたかなと思っていると話していました。
Macworld Conference & Expo/Tokyo 2001の基調講演で、Mac OS Xにヒラギノ書体がバンドルされることが紹介され、スティーブ・ジョブズ氏は「愛(W6)」を表示して「クール」と言ったと話してました。
当時、Appleは、写研の外字Cまでカバーしようと言う意気込みがあって、それが後にAdobeが規格化することになったと説明していました。
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